第5シードの錦織圭(日本)が全仏オープンでは初のベスト8進出を決めた。グランドスラムでは今年の全豪オープンに続いて通算4度目の8強になる。  この日の対戦相手のティムラズ・ガバシュビリ(ロシア)は世界ランク74位。ここ1、2年の錦織はほとんど格下への取りこぼしがなく、ましてガバシュビリは4月のクレーコートで破っている相手だけに心配はなかった。問題は天候だ。女子の4回戦に続く2試合目で、その第1試合が強い雨で中断。コートに出たのがようやく午後4時前で、細い雨の中でゲームが始まった。ボールが重くなる、中断もある、順延もあり得る……。 「いつもより、やりづらいシチュエーションで、より集中を高める場面が多くありましたが、それほど問題はありませんでした」  第1セット、相手の最初のサービスをブレークして主導権を握り、途中、雨が激しくなる場面もあったが、淡々としたプレーで第1セットを奪った。強い風を考慮してスピンサーブを多く織り交ぜ、ファーストサーブの確率は74%で安定。4日ぶりの試合を楽しむようなラリー戦から、自在なショットを広角に打ち込んでリズムをつかんだ。 「去年からクレーコートの戦い方を変えてきて、クレーでもウィナーが取れるようになっている。今年もスペインで結果を出して自信になっているし、この大会は、体力的にも余裕があります」  第2セットに入る前にかなり雨が強くなったが、この土地の雨は断続的で、コートサーフェスの水捌けは抜群に良いため試合続行。錦織にも、第6ゲームが終わったところでコートチェンジと勘違いする「単なる事故」はあったが、集中力を切らしたのはガバシュビリの方だ。第3ゲームにダブルフォルト3本をおかし、第5ゲームにもダブルフォルト絡みで連続ブレークを献上したのは致命的だった。第8ゲームにダブルフォルトのお返しでブレークを許しはしたが、錦織の独壇場でストレート勝ち。1時間56分でけりをつけた。 「全仏ベスト8は目標の一つでしたので、そのゴールをクリアできたのは嬉しいですね。ベスト8も慣れてきたのか、さほど驚きではないです。ここからタフな戦いになりますが、優勝までチャンスはあるかと思います」  次の相手は、第4シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)を倒した地元フランスの人気者、第14シードのジョーウィルフライ・ツォンガだ。ここまでの対戦成績は4勝1敗とリードしているが、ツォンガは故障上がりで、今シーズンは春からスタートしたばかり。 「ツォンガはサーブとフォアがいい。クレーでは初めてだと思います。不得意な相手じゃないですが、全仏は地元の声援が激しいので集中力を切らさないようにしたい」  スタン・ワウリンカ(スイス)も8強に進んだが、ロジャー・フェデラー(スイス)とガエル・モンフィス(フランス)の試合はセットカウント1-1となったところで、日没順延。全体を見渡せば、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ラファエル・ナダル(スペイン)、アンディ・マレー(イギリス)、マリン・チリッチ(クロアチア)……強豪ひしめく樹海が広がっている。勝負はこれから。 「プレッシャーはないですね。むしろエキサイティングです」とは頼もしい。  女子の4回戦は2試合が順延になったが、それに先立ってアナ・イバノビッチ(セルビア)、エリナ・スビトリーナ(ウクライナ)がベスト8に名乗りを挙げている。この日からジュニアが始まり、日本勢の男子はサンティラン晶、福田創楽、徳田廉大、女子は村松千裕がいずれも初戦敗退した。 文:武田薫