-大会レポート- 第4日 錦織万全の2回戦 「格の差」を見せつけクレー巧者を手玉  錦織圭がクレー巧者を冷静に料理してストレート勝ちを収め、次の3回戦は世界ランク48位のベンジャミン・ベッカー(ドイツ)と対戦することが決まった。  この日の対戦相手トーマス・ベルッチ(ブラジル)は、前哨戦のジュネーブ250で3年ぶりのツアー優勝を飾って気を良くしているところ。地元ブラジル人記者は「とは言っても、錦織とはぜんぜん格が違う」と控えめな評価だが、かつて4回戦まで上がった地力に自信が上乗せされていた。  第1セット、錦織がブレークポイントを掴むところまでいっても、左利き特有の外に逃げるサーブにキックサーブを混ぜ、なかなか切り崩せない。第7ゲームは30-0、第9ゲームは40-0としながら凌がれ、第10ゲームまで互いのサービスキープが続いた。ただ、錦織がここで落ち着いてラリー戦に集中したあたりが、ブラジル人記者の言う「格の差」だ。5-5で迎えた第11ゲーム、ダブルフォルトを2つ貰って40-30とすると、このセット6度目のブレークポイントで深いリターンからのラリー戦をモノにし、そのままセットを先取した。  28歳のベルッチは、かねがね技術の高さを評価されながらメンタル面の脆さが指摘されてきた。第1セットの攻防に弱点の改善が見られたが、錦織とは経験の裏付けが違う。錦織は1回戦からの2日間のオフに会場を離れ「ゆったり過ごした」という。練習は違う場所で軽く1時間ほど。前日には、西岡良仁を相手に左対策に備えてきた。よく知った相手とはいえ、ツアーレベルでは初対戦。序盤は探りを入れるショットも出しながらの熟練の仕込みで、余裕を見せた。  第2セットに入ってベルッチが崩れた。第1、第3ゲームで、ダブルフォルトを2本ずつ献上したところを、錦織がすかさず攻め込んで一気に5-1まで持ち込み、あきらめムードを固めた。終わってみれば2時間22分のストレート勝ち。第1セットの攻防に醸し出された勝負の綾が、世界ランク5位に定着した錦織の現在を雄弁に物語った。 「これまで全仏では、故障などタイミングが悪く結果を残せなかったが、今年は、体はどこも悪くなく精神状態もいい。クレーコートに自信もあるし集中できている。2試合ともストレートで勝てたのは嬉しい。この先が楽しみだ」  3回戦の相手ベッカーは、フェルナンド・ベルダスコをファイナルセット、10-8の激戦の末に破ったビッグサーバーだが、錦織は昨年2勝している。ドロー運も順調だ。この日のセンターコートは空席が目立ったが、これから徐々に盛り上がってくるだろう。  このほかの日本勢では、昨年に続いて2回戦に進んだ奈良くるみは、ルーシー・サファロバ(チェコ)の左からの強打に対応できずに完敗。第7シードのアナ・イバノビッチ(セルビア)に挑戦した土居美咲は持ち前のショット力で第1セットを奪ったものの、攻めきれず惜しくも敗れた。  男子では第2シードのロジャー・フェデラー、第4シードのトマーシュ・ベルディヒ、第8シードのスタン・ワウリンカらが順当勝ち。女子では第3シード、シモナ・ハレプがベテランのミルヤナ・ルチッチ バローニに敗れる波乱があった。この日は、ファビオ・フォニーニ、エルネスツ・グルビス、ドミニク・ティーム、マルコス・バグダティス、女子のカミラ・ジョルジらも姿を消した。また女子ダブルスでは、初めてフランチェスカ・スキアボーネとペアを組んだクルム伊達公子が逆転で1回戦を突破している。 文:武田薫