いよいよ今日から全仏が開幕します。錦織はスザンヌ・ランランの第3試合に登場してマチューを迎え撃ちます。錦織以外にも添田、奈良、土居と大量に試合日程が組まれており、日本人のテニスファンにとっては賑やかな日曜の夜になりそうです。    今日はプレビューの後編、様々な立場からそれぞれの全仏をお送りします。 【激突!ジョコビッチvsナダル】  ドロー発表の後、くじを引いたシャラポアはナダルに謝ったのだとか。なんと第6シードのナダルがジョコビッチの山に入ってしまったのです。あまりにも早過ぎる両雄の激突は大きな話題です。実は以前にも一度だけこの二人は全仏準々決勝で対戦したことがあって、それは9年前2006年の全仏。当時63位のジョコビッチはハースやモンフィスを破るなどして準々決勝まで勝ち上がりました。だが迎えたナダル戦は完敗、これが以後43度の激闘を繰り広げることになる両者の初対戦でした。  かつてないほどに追い詰められた、全仏9回優勝の「クレーキング」ナダル。今までなら楽々と退けられた相手との対戦でも今年はどうなるかわかりません。2回戦にはアルマグロ×ドルゴポロフの勝者との対戦が組まれています。順当なら4回戦でぶつかる第10シードにはディミトロフが入っています。マドリッドで両者バックハンドを突き合ってドロドロの乱戦を繰り広げた光景が思い出されます。ディミトロフのブロックには実力者ロブレドもいますが、この二人とぶつかったときナダルがどう対応するかで先が見えるでしょう。ここで苦戦するようならジョコビッチに勝つなど夢物語でしかありません。  一方大会直前に28歳の誕生日を迎えたジョコビッチは05年に全仏初参戦してからこれが11度目の参戦。「11度目」というのは運がよい数字です。1999年アガシ、2009年フェデラーはともに全仏11度目の参戦で悲願の全仏タイトル、そして生涯グランドスラムを手にしています。偉大な先人達に続くにはこれ以上ない舞台がお膳立てされているのです。 .@DjokerNole was treated to a birthday surprise at #RG15. It was gluten-free, of course! pic.twitter.com/puapaG7qG9— Roland Garros (@rolandgarros) 2015, 5月 22  ただしその先人達はいずれも死地を乗り越えてのタイトル獲得でした。フェデラーは3回戦ハース・準決勝デルポトロに、アガシは2回戦のクレマン・決勝のメドベデフ戦と後1セットで敗退というところまで追い詰められながら這い上がり、勝利を手にしました。ジョコビッチに対してもシード通りに行けば準々決勝ナダル、準決勝マレー、決勝フェデラーとBIG4の手荒い歓迎が待っています。いくらジョコビッチと言えどもこれは中々にハードなドローですが、観る側からすればこれ以上ないショータイム。ジョコビッチの戦いぶりに全世界の注目が集まります。 【カギを握る存在:新生マレー】  マドリッドでこれ以上ない素晴らしいテニスを見せ優勝したマレー。1年半ぶりのMS制覇を今まで苦手だったクレーで成し遂げたことで俄然マレーの注目度が高まってきました。ローマでも初戦を危なげなく勝った後疲労を理由に退き、全仏への調整はほぼ万端とみてよいでしょう。(持病の腰痛があった)BIG4時代に打てなかったショットも打てているとのことで、本人も今の状況に手応えを感じているようです。  全仏は元々マレーにとってクレーの中では相性の悪い大会ではありません。昨年一番成績のよかったGSはベスト4に入った全仏です。2011年にもベスト4に入っています。ただしそれはトップ20クラスの選手相手に高い総合力で退ける力を持つというだけ(これでも十分凄いのですが)でまだトップ10から勝利を上げたことはありません。2012年には準々決勝でフェレールに敗れましたがそのときもむしろフェレールの順当勝ちという見方が主流だったぐらいです。  今回再び対抗シードにフェレールを迎えています。二人の準々決勝が実現すれば、今のマレーが3年前と比べてどのように変わったか、私達は目にすることになるでしょう。その勢いでジョコビッチに挑めれば… 【勢いづく若手陣】  全仏前に行われたATP250、ニース大会でティエムがツアー初優勝を果たしています! Dominic Thiem wins first career title with 6-7 (8), 7-5, 7-6 (2) win over Leo Mayer in Nice: http://t.co/hKCH56tgbG pic.twitter.com/Xa5lc3j54Y— TENNIS.com (@Tennis) 2015, 5月 23  この優勝で一気に30位程度までランキングを上げるティエム、「専門外」のクレーシーズンでも苦にせず勝ち星を積み上げるキリオス、ニースでベスト4に入りトップ50入りを確定させているコリッチ、等々若手陣が元気に活躍しています。28歳の誕生日を迎えたジョコビッチやマレーが最早ツアーのトップ選手の中では若いぐらいに思えてくる現状が彼らにとって逆にチャンスかもしれません。錦織とラオニッチを除いて伸び悩む23~27歳層を一気に突き抜け彼ら、本当の意味での若手達が上がってきてくれることを期待する向きは多いです。  コリッチは初戦クエリー2回戦ロブレド、ティエムは2回戦でクエバス、第29シードを手にしたキリオスも3回戦でマレーと彼らのドローは厳しいものになっていますが、誰かが突き抜けてくれば台風の目になるかも?他にはヴェセリやコキナキス、シュワルツマンなどの若手陣がローランギャロスの赤土を踏みしめます。 【日本人達】  今年の全仏には5人もの日本人男子が参戦!本戦ストレートインを果たした錦織、添田、伊藤に加え西岡とダニエルが見事予選を突破、本戦入りを果たしています。現在戦っている添田は強豪コールシュライバーを相手に厳しい戦いを強いられていますが、皆かなり厳しい相手との激突です。伊藤はフォニーニと、西岡はベルディヒと、ダニエルはベルダスコという全員がシード選手との激突。しかもこの4人の中にクレーに弱いいわゆる当たりのシード選手は一人もいません。しんどい戦いになると思いますがその中で何ができるか、特に若い西岡とダニエルはこれから毎年のようにここに参戦していくだろう選手です、負けるにしてもきちんとやることやって負けてほしい。それが次の参戦に繋がると思うのです。