錦織選手が上のステージに上がるために必要なこと。 ~全仏を前に~
男子テニスが盛り上がっております!
我らが錦織選手の大活躍で、定期的に寝不足になるはめに…(笑)
今年はこれまで大きな怪我もなく、すでにツアー2勝をあげる安定した戦いぶり。
ランキング5位も、すっかり定位置と言って問題ないレベルにあります。
ちょっと前まで、top10の居心地が悪いなんて言っていた選手とは思えない快進撃を続けてくれています!
これまでの日本人のテニスの歴史を思えば、ここまででも十分すぎるほどの成績で、これ以上を求めるのは、酷だと言えなくもないですが、常に上を目指すのが、スポーツ選手およびファンの性というもの。
ここまできたら、さらに上を狙っていくのは必然です。
しかし、なんと恐ろしいことでしょう…
これより上とは、つまりあのBig4の牙城を崩すということにほかなりません!
恐ろしく高いハードルです…
ランキング1位のジョコビッチ選手は、今季マスターズ1000以上の大会で負け無しと、今がまさに全盛期。次の全仏で勝てばキャリアグランドスラムを達成します。そうすれば、年間グランドスラムも現実味を帯びて来ます…
2位のフェデラー選手は、グランドスラム歴代最多の17勝およびキャリア1000勝を誇る、歴代最高のプレーヤー。33才とキャリアの終盤に差し掛かっていますが、その強さはまだまだ健在です。
3位のマレー選手は、ジョコビッチ選手と同い年。実績でこそ他の3人に水をあけられているものの、今年結婚してからは負け知らず。これまで苦手としてきたクレーでも勝ちまくる充実ぶりは、全仏でジョコビッチ選手の最大の壁と目されます。
残る一人は言わずと知れたナダル選手。今季調子があがらず、苦労していますが、全仏の9勝を含むグランドスラム14勝はフェデラーに次ぐ歴代2位タイ!すでに伝説の住人です。
こんな面子に挑むのは、並大抵ではありません。年間を通して互角に戦うには、自らが伝説級のプレーヤーにならなければ不可能です。
あらかじめ申しておきますが、錦織選手は、5位をキープするにはすでに肉体的にも、精神的にも十分な実力を持ち合わせています。とてつもない力です!
キャリア24勝を誇るフェレール選手より強い、と言い切って良い戦績をあげていますし、現役最高のファイナルセットの勝率が、精神力の強さを物語ります。
しかし、奇しくもジョコビッチ選手本人が言及したように、Big4とはまだ差がある…
マドリッドのマレー戦、そしてローマのジョコビッチ戦を通してその差が明確になったのではないかと思います。
これまでは、どれくらい差があるのかすらも霧の中だったわけで、逆に言えば、ついにそこまで近づいてきた、とも言えます!
錦織選手が、彼らを倒しうる技術をもっていることは、皆が認めています。
昨年までの最大の課題は、怪我の克服と、連戦を勝ち抜く体力でしたが、それもほぼクリアしつつあります!
やはり、残るは精神的な部分でしょう。
錦織選手が、さらに上のステージ、具体的には、マスターズ1000やグランドスラムのビッグタイトルを取るには、もう一段階上の精神力が必要だと思います。
それは、determinationとしか表現しようのないもの(日本語では適当な言葉が見つかりません)。
準決勝、決勝レベルで本気のBig4と当たった時、「絶対勝つ」という強い気持ちを持続できるか、という点に凝縮されると思います。
マドリッドのマレー選手も、連戦の疲れで決して万全の体調ではありませんでした。ローマで途中棄権したことを考えてもそれは明らかです。
長いラリーの後、苦しそうな表情も見せていましたが、それは錦織選手からは見えない場所でのことでした。そして、次のサーブで顔を合わせるときには不敵な笑みまで浮かべているのです。このあたりの精神的駆け引き、苦しい時こそ弱みを見せない精神力。さすがでした。
錦織選手は、まだ苦しい時に苦しい顔を相手に見せてしまっています。自信を失いそうな時ほど自分を奮い立たせて、不敵な笑みを浮かべる、勝つためには何でもやる、そんなしぶとさがまだ足りないと思います。そして、それはマイケル・チャンコーチという最大のお手本がそばにいるわけですから、ぜひ学んでほしいところです。
ローマのジョコビッチ戦でも、同じ弱みを見せました。第2セット見事なテニスで打ち負かしましたが、あれはジョコビッチ選手を下がらせたというよりは、コートの荒れ具合を見てジョコビッチ選手が意図して下がったのだと思います。結果として押し込むことに成功したわけですが、第3セットでそこを修正してきたジョコビッチ選手の前になすすべなく破れてしまいました。
ジョコビッチ選手も苦しかったはずです。リスクを冒さなければ勝てない相手だったわけですから。その苦しさは、第4ゲームの雄叫びに表れていました。あれは、これでこの試合は決まったとその場にいた全員に印象付けるパフォーマンスでもありましたが、それ以上にそれまでの苦しさの表れでもあったと思います。あれをみて、逆説的に錦織選手の成長を感じたのは私だけではないはず。
あそこで錦織選手の緊張の糸がぷつっと切れてしまったわけですが、相手の苦しさを感じ取ることができれば、もうひと踏ん張りできたはずです。
このBig4 2連戦は非常に大きな経験になりました。何が足りないかは、本人そしてコーチがちゃんとわかっているはず!全仏ではより強くなった姿を見せてくれることでしょう。
そして、勝つためにもう一つ必要なものがあります。
それは「運」です。
グランドスラムで運なしで勝つほどの実力を持っているのは、今はジョコビッチ選手ただ一人でしょう。
そういう意味で、錦織選手にも運が必要です。
全仏のドローが発表されましたが、ロランギャロスの女神は今年はナダル選手に試練を与えたようです。
キャリアグランドスラムの夢がかかるジョコビッチ選手も、順当にいけばQFでナダル、SFでマレーという今年の全仏では考えうる最悪のカードを引いています。
逆に錦織選手には笑顔を向けてくれているように見えます。
しかし、このチャンスを生かせなければ、二度と微笑んでくれないような怖さも感じます。
もしかしたら、ジョコビッチ選手に最大の「試練」を与える役割を期待されているのかもしれません…
この「運」を生かして、初のビッグタイトルを手にできるか、非常に楽しみです!