ー錦織は まだまだ BIG4には及ばないー 先週マドリードでのマレー戦の結果、そういう論調が各スポーツ紙記事を見ていると目立つようです。果たして本当にそうでしょうか? 皆様初めまして。当方テニス観戦が大好きで、サンプラスやアガシ、ナブラチロワやグラフ、伊達公子の時代からのテニスファンです。今回錦織の現在地というか正しい現状というものを皆さんとよく考えてみたくなり記事を書いてみようと思った次第です。 昭和生まれの流行言葉で言えばアラフォーで、IT機器には弱くキーボードを人差し指でポチポチ叩きつけながらの投稿ですので、仕上がるのに何時間かかることやら。といった具合ですのでおそらくは頻繁に更新したりは無いと思いますが、「おっさんが苦労して書いたんだなぁ」というぐらいの生温かい眼で読んで頂ければ幸いです。 さて本題に戻ります。皆さんもそう思いますか?ジョコビッチ、フェデラー、マレー、ナダルこの4人に錦織がまだまだ勝てないと。 私は決してそうは思っていません。もちろん実績面で遥かに及ばないのは当然です。この4人の実績はテニス史に燦然と輝く実績を残している4人です。マレーに関して異論がある方もいるかも知れませんが、あの3人を向こうに回してマスターズを10回優勝、GSタイトル2つ、GS準優勝6回はまぎれもなく素晴しい実績だと思います。 私も一昨年まではBIG4が健在な限り錦織のグランドスラム制覇は夢のまた夢だと思っていました。錦織が初めてGSベスト8に進んだ2012年全豪でマレーにコテンパンに叩きのめされた時には絶望したものです。しかし今回の敗戦はあの頃とは全くもって印象が違いました。一言で表現するならば『マレーにうまくいなされてしまった』という印象でした。 マレーという選手は状況分析能力が優れている選手で試合状況を的確に判断している節があります。例えばセカンドサービスでのポイントが取れていないと判断するとファーストサービスがプレースメント(コントロール)重視になり確率を上げてきます。今回の試合でもロングラリーになると分が悪いと判断したのでしょう、勝負に行くのがいつものマレーとは別人のように早かった。錦織に先に攻撃させたくないという意図が見えたような気がします。試合中このような判断、そしてそれを実行に移すのは、想像以上に難易度の高いスキルなのでしょう。どうしてもボールと自分のフィーリングに意識が集中し相手選手の状況にまで気を回す余裕をほとんどの選手は持てない。マレーの試合状況を俯瞰で見られる能力は素晴しいものがあります。 逆に言えばそれだけマレーは錦織のオフェンス能力を警戒していたのではないでしょうか?類稀なるラケットワークから生まれるフォア、バックともに極上のライジングショット、繊細なタッチから生まれる芸術的なドロップショット。誤解を恐れずに言うならば私は錦織のベースラインからの攻撃力は現ツアーの選手中でTOPだと思っています。 私個人の意見は錦織は現時点でもういつグランドスラム優勝してもなんら不思議ではない位置にいると考えています。あとは錦織自身が自分を信じきれるか、 『勝てない相手はもういないと思う』を通り越し『自分が優勝するに違いない』位の気持ちで大会に臨んでほしい。 去年一年間を振り返れば全豪4回戦ナダルとの試合、セットカウントは0-3でしたが、ベースラインでのストローク戦に限っていえば互角、いやむしろ押し込んでいる錦織をを見たときについに今年中にTOP10に入ってくるに違いないと当時思いました。(まさか5位までいくとは想像以上でしたが…)その後マイアミMSでディミトロフ、フェレール、フェデラー連続撃破しベスト4、マドリードMSで決勝まで行き腰痛が悪化するまではナダルを圧倒し、全米OPではラオニッチ、バブリンカそして現NO.1ジョコビッチを倒し準優勝。最終戦ATPツアーファイナルズでもラウンドロビンで本調子ではないとはいえマレーを倒しベスト4。 昨年一年間の状況を考えた時にBIG4の内3人に実際ガチンコ勝負で勝っていて唯一一度も勝っていないナダルに対してももう勝てない相手じゃないと思わせてくれた試合を見せてくれた錦織に ー錦織は まだまだ BIG4には及ばないー と言えますか? さて最後にもう一つ錦織のストロングポイントを挙げておきましょう。テニスファンにはおなじみのあの数字、そうですディサイディングセット(ファイナルセット)の勝率です。先週のゴファン戦でフルセット勝利したことにより錦織の勝率はATPツアー史上誰もいない80%に到達しました。 勝 敗 勝率 1位  錦織  76  19  80.00% 2位  ボルグ 119 41 74.38% 3位  ジョコビッチ 135 48   73.77% 4位  ディミトロフ  55  24  69.62% 5位  マレー  120  53  69.36% 6位  ナダル  122  54  69.32% 7位  コナーズ  231 104  68.96% 8位  レーバー  125  57  68.68% 9位  マッケンロー 164  75  68.62% 10位 サンプラス  189  88  68.23% 11位 デルポトロ  71  34  67.62% 12位 クリーク  125  60  67.57% 13位 ベッカー  163  80  67.08% 14位 アッシュ  181  89  67.04% 15位 ビランデル  122  62  66.30% 16位 ムスター  169  86 66.27% 17位 ベルトルッチ  88  45  66.17% 18位 ディブス  153  79  65.95% 19位 ニューカム  109  57  65.66% 20位 カフェルニコフ193 101  65.65% いやー、この表を見てるだけでドンブリ飯3杯はいけますねー。錚々たるメンバーの中で堂々のTOP。ただ一人の8割越え。この中でGS優勝経験なしは錦織、ディミトロフ、ベルトルッチ、ディブスの4人だけ。この数字を挙げると錦織は格下にフルセットへ持ち込まれるからという人がいますが、どの選手でも3セットマッチだと特に流れ一つ展開一つでフルセットに持ち込まれることはしばしばテニスでは起こりうることです。現に昨日ジョコビッチもアルマグロ相手にフルセットを戦っています。過去52週フルセットを戦った試合数がどのくらいか主要選手だけ見てみると ジョコビッチ 18戦 フェデラー  20戦 マレー    19戦 ナダル    13戦 (昨シーズン終盤休養) 錦織     23戦 ラオニッチ  26戦 ベルディヒ  20戦 フェレール  29戦 ディミトロフ 22戦 というように錦織が特別多いわけではありません。 ATP史上最高のクラッチプレイヤー錦織圭のグランドスラム制覇はそう遠くない未来に待っていることでしょう。