マスターズ1000、マドリードオープンQuarterfinal、錦織圭vsダビド・フェレール。 錦織圭本人にして「彼とラオニッチとは特別な絆があるみたい」とも言わしめるほど、言わずと知れたライバル選手です。 昨年はマイアミ3RとマドリードSF、パリQFにTFRR3戦目と、その4試合すべてに錦織が、いずれもフルセットの接戦を制してきました。 さらに今年に入ってからも全豪4Rで対戦、ここでは錦織の今季ベストゲームと言っても過言ではないほどの快勝で5連勝を収めました。 勝負付けが済んだ?とも思えるほどの圧倒劇でしたが、その後のアカプルコ決勝ではフェレールが雪辱を果たし虎の子の一勝を挙げました。 錦織が第1シードで臨んだ大会はここまで5大会(1415メンフィス、14クアラルンプール、15アカプルコ、15バルセロナ)、21勝1敗で4度優勝していますので、唯一の敗戦となった試合でもありました。 しかし先日のエントリーでも紹介したように、この試合はフェレールの執念と錦織の自滅が壮絶にあいまった、非常に特殊なケースと私は考えます。 自分自身を見失わず、去年から奏功している攻撃なプレーを貫けば、現在の力関係はクレーコートといえども錦織が上回っているのではないかというのが私の戦前の見方でした。 しかしこの試合の序盤は、危惧していた通りの悪い入り方。 フェレールはラブゲームでキープ、錦織は続く2ndゲームも落としてしまいます。 実に9ポイント中1ポイントしか取れず、それもほとんどがラケットへの当たりも悪いようなエラーを量産。 GAORA解説者の佐藤武史さんも「錦織から闘争心のようなものを感じない」と言うほどで、どこか試合には入れていないような、まさに最悪と言っていい立ち上がりだったと思います。 ですが、思いがけず序盤のリードを手にしたフェレールの様子もどこかおかしい。 試合後の錦織のインタビューで「特に何をしたわけではないが、あのゲームが大きかった」と語る第3ゲーム、ここでフェレールはダブルフォルト2つを犯し、1度のブレークチャンスを錦織に決められてしまいます。 「あそこで0−3になっていたら分からなかった」 というのはまさに正直な感想でしょう。 掴みかけた流れを自ら手放し、試合は振り出しに戻ることとなりました。 この試合のフェレ−ルは錦織のリターンを相当に警戒していたようで、2ndサービスの速度は1stセットで錦織よりおよそ20kmも上。 その分ダブルフォルトも多く、必要以上に錦織を意識するあまり、彼本来のテニスができていなかったように思います。 結局フェレールの1stサービスのポイント獲得率は1stセットが11/17、2ndセットは5/15(inは79%なのに)ですから、これまでの対戦の影響もあってか、自分に自信が持てなくなってしまったのではないかとも思うのです。 アカプルコでは勝利したものの、サービスゲームのポイント獲得は1stが25/44、2ndは16/30でしたので、結局はここに相当な注意を払わざるを得なかったのでしょうか。 絶対に諦めない、鉄人フェレールをここまで追い込んでしまう選手など、世界中を見渡しても片手で余るほどでしょう。 地元スペインの大歓声を受けながら踏みとどまるフェレールでしたが、第9ゲームを落とし、続く錦織のSFSも15−40としましたが、錦織が踏ん張ってセットを失ってしまいます。 2ndセット1stゲームで早々とブレークされた後のブレークバックはお見事でしたが、あのウィナーくらいしかフェレールのよかったところを思い出すことができません。 昨日のエントリーで申し上げた、試合の鍵を握るウィナーとエラーの数の比率ですが、錦織はウィナー22、エラー23。 対するフェレールはウィナー6にエラー23、これでは尻上がりに調子を上げてきた錦織には太刀打ちできません。 これまで積み上げてきた2人の戦いの歴史が反映されるような展開になり、錦織圭がベスト4へと駒を進めました。 特別な絆、というのは本当に見ている方も感じるもので、私自身もフェレールとラオニッチにはやや特別な思いを持つようになりました。 2人はどんな負け方をしても、決して不満や言い訳をしないナイスガイ。 錦織が勝ったことは何より嬉しいことですが、フェレールのことを思うと少し寂しくも思ってしまうのは私だけでしょうか。 いや、自分で矛盾することを言っているのも分かるのですが。 とは言ってもこれで錦織はレースランキングでフェレールを抜いて4位に浮上。 フェレールも今季はすでに3勝を挙げて好調をキープしていますので、このまま終わるような選手でもないでしょう。 今日はベルダスコ戦の疲れもあったでしょうし、この先のローマやローランギャロスで再び相まみえることもあるでしょう。 ずっと応援していたい選手の一人です、お互い万全の状態で対戦することはなかなか難しいでしょうが、これからも錦織との名勝負を期待したいですね。 フェレールの話ばかりになってしまいましたが、錦織にとっては「勝っても無事では済まされない」フェレール相手に1時間12分のストレート勝ちができたことは、これ以上ない収穫でしょう。 マレーvsラオニッチの試合が長引かず、深夜に渡るゲームにならなかったことは本当にラッキーでした。 昨年のバルセロナ優勝からマドリード準優勝のディフェンドは「mission impossible」な案件と思われましたが、とうとうここまで戻ってくることができました。 昨年からの錦織はクレーコートで未だ底を見せておらず、純粋にどこまでいけるのか興味が尽きません。 マレーとの対戦プレビューはまた後でエントリーするつもりですが、試合開始時間は明日の午前3時。 今度は地上波でも生中継するそうで、多くの人が応援できそうですね。 まずは準決勝進出おめでとうございます、いいリカバリーができていることを心より願っています。