錦織の素晴らしい試合に満足された方も多かったのではないでしょうか(その分かなり待たされましたが)。錦織は立ち上がりだけ悪くいきなりブレイクを許す不安なスタートでしたが、フェレールがお付き合いしてブレイクバックをプレゼントしてくれたことで立ち直るきっかけになりました。その後第1セットの激しい打ち合いの中で、錦織のキープを助けてくれたのは1stサーブの入りでした。ファーストがきっちり入ることでその後のラリーを有利に進めることができたのです。第7ゲームで再びブレイクした錦織は最終ゲーム15-40と逆襲されたものの踏ん張って第1セットを先取します。  すると第2セットは錦織ショーとなりました。次々とウィナーがフェレールコートに突き刺さっていきます。第2ゲームこそショットが決まらずブレイクバックを許しましたが、直後のゲームを再び破るともう一直線でした。リターンエースが何本も突き刺さり、会場がどよめくシーンもありました。第2セットの錦織はフェレールのサーブを3度ブレイクし、6-4,6-2でストレート勝ち。初めてストレート勝ちした全豪4回戦以上に、過去最高レベルの完勝だったと思います。  フェレールは本来あまり攻め合うタイプの選手ではありません。しかし超攻撃型・錦織の攻めは守るだけでは跳ね返せない…そこでフェレール自身からも攻めこむことでチャンスを作ったのがアカプルコ決勝でした。しかし今日はフェレールの攻めが無理攻めとなって失敗するシーンが目立ちました。  解説者の方々が好んで使う表現「時間を奪う」シーンも結構あり、それがまた効いていましたね。ライジングだけでなく、逆に限界までボールを引きつけ1テンポおいて叩き込むシーンもありました。フェレールは足を滑らしたり逆を突かれたり動けなかったりと散々でした。 Amazing focus! Kei #Nishikori signs off a solid win on signature cam. #MMOPEN15 pic.twitter.com/2W1HsnupZo— TennisTV (@TennisTV) 2015, 5月 7  さああと2戦! 【準決勝第1試合 ナダル×ベルディヒ】(ナダルの18勝4敗、日本時間22時試合開始)  ナダル対ディミトロフ戦は見ててしんどい試合となりました。お互いがお互いの弱点を付き合ったのです。ナダルがディミトロフのバックハンドを突いたのは想定通りでしたが、ディミトロフもまたナダルのバックハンドを付いて対抗してきました。しかも今日のナダルには相手を仕留めるストロークがあまりなく、第2セットは特にフォアハンドがベースラインのはるか手前でバウンドする悪いときのナダルでした。  しかしそれでもナダルは勝ち切りました。消耗戦をひたすら踏ん張り、耐え抜きました。逆に耐え切れなかったのはディミトロフで、第2セット4-5、デュースという最重要局面でDFを犯す致命的ミス。一度目のMPはしのぎましたが続くデュースでナダル渾身のリターンエースを食らってしまい万事休す。ナダルが6-3,6-4で勝利を収めています、  一方ベルディヒもイズナー相手に大苦戦でしたが勝ちあがりました、イズナー相手に2度のタイブレークを制したのは流石です。これでベルディヒは格下相手への取りこぼし0%を継続(28勝0敗)することになりました。本当に驚くべき戦績です。しかし対トップ10は2勝7敗、ここを乗り越えられない限りこの先に勝ち上がることはできません。 .@RafaelNadal moves to within 1 win of a 7th @MutuaMadridOpen final. http://t.co/grfdV6oGUB #atp #tennis pic.twitter.com/pgM9ENL1tq— ATP World Tour (@ATPWorldTour) 2015, 5月 8  ベルディヒにとって、過去17連敗していたナダルとの対戦ですが、同時に今年の全豪でその17連敗を止めた相手でもあります。ベルディヒがやるべきことはシンプルです。主要武器である1stサーブをしっかり叩きこむこと。フラット気味のストロークでナダルを押しこみ、押し込んだところでオープンコートにウィナー級ショットを決めること。ディミトロフ戦のままのナダルなら、これで勝てるはずです。  もちろん好き放題にさせられないのはナダル。ベルディヒは弱点の少ない総合力の高いプレイヤーですが処理を苦手とする傾向の高いボールがあります。足元に来るボールや、下がりながら打つフォアハンド。もちろん好きな人などいないと思いますが、特にベルディヒは一歩前に踏み込んだ時に逆に深いボールが来ると露骨に苦しい返球となるのです。  つまりディミトロフ戦のように浅いフォアハンド打ってないで、しっかり深く叩きこめ!という話になります。さらに言えば、ナダルのストロークが浅いとそこをベルディヒの攻撃起点にされ致命傷になる可能性すらあります。昔のナダルならそういう悪い日でもコート中走り回って返球してなんとかしてしまうのですが、今のナダルにそんな力はない以上、絶対それは避けなければなりません。  試合を見る方はナダルのストロークの深さに注意しましょう。浅いショットが続くようなら、危険信号です。 【準決勝第2試合 錦織×マレー】(錦織の1勝3敗)  昨年のツアーファイナルズ初戦以来半年ぶりの対決です。その時のスコアは錦織6-4,6-4マレー。いずれも5-4からブレイクに成功しての勝利という理想的なリードの奪い方でしたが、逆にそこでブレイクできていなかったら勝者はどちらだったかわかりません。またあの試合はマレーのパフォーマンスの低さも目立ちました。  ミュンヘンからの過酷な連戦の続くマレーはラオニッチをストレートで下しての準決勝進出。だがラオニッチはモンテカルロで痛めた足首を終始気にしており特に第2セットは辛そうでした。マレーは安定した1stサーブやストロークでラオニッチを徐々に追い詰め、2セットともタイブレークに持ち込ませることなく仕留めています。 It's #AndyMurray vs #KeiNishikori in the Madrid semifinals on Saturday - who's your pick? http://t.co/7Qn6rEi71K pic.twitter.com/d16zulqtMT— Live Tennis (@livetennis) 2015, 5月 8  フェレールが自分のスタイルを崩してまで過剰に攻撃的に来たのは、フェレールの守備力では錦織の攻めに対して守りきれないから。だがマレーは違います。ひたすら拾い、ひたすら返すフェレールの守備では錦織の攻撃を止めることができませんでした。だがスライスやロブを積極的に織り交ぜ、コースも工夫しありとあらゆる手を使ってかわしてくるマレーの守備はフェレールのそれとは全くの別物です。そしておまけに中途半端に攻撃を繰り出すとカウンターの強打が飛んできます、バックハンドからはフラットに、フォアハンドからはスピンを効かせて…  錦織の攻撃がマレーの策を打ち破れるか、この試合は錦織の試金石になるかもしれません。ロペス戦の敗退などで「錦織は技巧派に弱い」疑惑を持っている方も結構いるのではないでしょうか。その懸念通りに泥沼にはまってしまうのか、それをものともせずに今日のような超攻撃を繰り出して攻めきってくれるのか。注目の一戦は今夜27時試合開始です。