冷や冷やだった初戦から一転、バルセロナで唯一セットを許した難敵アグートをあっさり退けた錦織。準々決勝へ向けて順調と言ってよいでしょう。決勝まで勝ち上がれば5連戦となる中でここで一息つけたのも大きいはずです。試合後はレアル・マドリード所属のチチャリートとツーショットをパチリ。  ここまで大きな番狂わせはフェデラーの敗退のみ。クレーでのフェデラー敗退も予想するのは難しくなかったので、「ほぼ」自分の事前プレビュー通りのメンバーが揃いました。ここからがお互いの全てを懸けた潰し合いの始まりです。一瞬も目が離せない3日間、錦織以外も見ながら追いかけていきたいと思います。 Very nice to meet @CH14_ just now. Good luck in the @ChampionsLeague semi-final. pic.twitter.com/KatW6SMrKa— Kei Nishikori (@keinishikori) 2015, 5月 7  さあ準々決勝のプレビューです。今日は女子準決勝が2試合行われた後の男子4試合となります。 【ナダル×ディミトロフ】  クレーのディミトロフは上がってくる!とプレビューで大見得切ったので本当に上がってきてくれるか心配だったのですが、フォニーニ、バブリンカといった難敵をいずれも接戦の末退けて無事に勝ち上がってきました。やはりこの人はハードよりクレーのほうが得意なのでしょう。一方「クレーキング」ナダルの勝ち上がりはここまでは盤石です。本来の実力を発揮すればディミトロフもあっさりと退けてよいはず。ここでもたつくようであればより強敵が控える準決勝、決勝はダメかもしれません。  ディミトロフ対策は基本的にフェデラー対策がそのまま当てはまり、バックハンドを突いて崩すのが一般的でしょう。またディミトロフのダメなときは自分から攻められない傾向が強く、そこを突いてナダルからフォアハンドをガンガン繰り出していけば勝利は容易いはずです。今までのナダルにとっては楽な相手で通算成績も5勝0敗としていますが、逆にバルセロナのフォニーニ戦のようにナダルのストロークが単調になり、ディミトロフが躍動し始めたりでもしたら… 【ベルディヒ×イズナー】  モンテカルロ明けのランキング記事で特集した通り、ベルディヒが素晴らしい安定感を披露しています。ガスケ、ツォンガのフランス勢をいずれもストレートで退けてのベスト8進出。現在暫定4位のベルディヒは今大会の結果次第でキャリアハイの4位を記録できます。  ベルディヒの対戦相手はイズナー。イズナーはフェデラーブロックの勝者です。フェデラーは死闘の末にキリオスに敗れ、そのキリオスをフルセットで振り切ったのがイズナーということになります。フェデラーに関して言えば、モンテカルロの敗退を見ても、イスタンブールの苦戦を見てもクレーでの戦い方が明らかに低下している印象を受けます。それでもイスタンブールを勝ち切ったことで、クレーシーズンは合格点なのかもしれません。あとは全仏で最低限の成績を残して芝に入れればOKでしょう。  この両者の対決はベルディヒが大幅にリードしていて6勝2敗。全てストレート勝ちで4連勝中のベルディヒが取りこぼす確率はゼロに近いと思われます。 【マレー×ラオニッチ】  マレーに謝らなくてはいけません。ミュンヘンで死闘に次ぐ死闘を戦ったマレーにマドリッドを勝ち上がる力などないだろうと思っていた自分が甘かったです。マレーは二日がかりの決勝から中1日で行われたコールシュライバーとの再戦、日付変わってから始まり深夜3時ちょうどに終わるというとんでもない試合、を突破して3回戦に進出すると、その日の夜にはグラノジェルスをストレートで退けて準々決勝に進んできました。昨年終盤の6週連続参戦を思い出すタフっぷりを披露しています。  こういうときのマレーの戦い方は決まっていて、技巧の限りを尽くして丁寧につなぎ、スライスやロブを織り交ぜながらじっと耐えます。そのまま相手のミスを誘ったり、中途半端な攻撃に対してはカウンターを浴びせて逆襲するのです。  つまり強力サーブと強打連発で攻め切りたいラオニッチとは真正面から対立することになります。相手のスタイルを打ち破り準決勝に進んでくるのはどちらになるでしょうか?通算3勝2敗と勝ち越しているラオニッチにとって狙い目なのはマレーの甘いセカンドサーブ。ここを強打してポイントを稼ぎ、マレーのサーブにプレッシャーをかけていければブレイクのチャンスが出てくるはずです。 【錦織×フェレール】(最終試合:日本時間28時半~29時過ぎに試合開始)  日本時間27時から始まるマレー対ラオニッチが終わり次第始まるのがこの試合です。大会運営もわかっています、死闘確定のこの試合をマレー達より後に持ってきたのです。時間はいくら押しても大丈夫、思う存分戦え! Last year's finalist @keinishikori will play @DavidFerrer87 in the @MutuaMadridOpen QFs. http://t.co/FSFjUpc0S0 #atp pic.twitter.com/jTUjvVlWRW— ATP World Tour (@ATPWorldTour) 2015, 5月 7  対戦成績錦織の7勝4敗。昨年のマドリッドでは準決勝で対決し、2014年度ATPベストマッチ第2位に選ばれたほどの激闘の末、錦織が勝利を収めました。この勝利を含めて錦織は対フェレール5連勝を記録しましたが、直近の対決となったアカプルコ決勝ではフェレールが意地を見せ錦織から久しぶりの勝利を奪っています。それから3か月と経たないうちの再戦です。錦織自身も「多分、ツアーでも一番やっている相手。今年も3度目。不思議な感じですね。彼とラオニッチは特別な絆があります(笑)」とライバルとの対戦の多さについて語っています。  フェレールも33歳になりました。最後の1球まで食らいつく不屈のファイターぶりはいささかも衰えを見せていません。バルセロナではらしくない戦いぶりで準決勝敗退でしたが、このマドリッドでもベルダスコとの約2時間半にわたる激戦をなんとか振り切って準々決勝にたどり着いています。3回戦でアグートをあっさり退けた錦織とは対照的です。  そこまで調子はよくなさそうですが、かといって軽視していい相手ではないのはもちろんです。1年前のマドリッドでそうだったように、フルパワーフルスピードで叩き込んでいく錦織の攻撃を全て跳ね返してくるでしょう。それに耐えきれず錦織のミスが増えていくような展開になると苦しくなります。アグート戦でそうだったように、展開によってはペースをコントロールしながら戦うことが必要になってくるかもしれません。  面白い試合になることは間違いないと思います。早朝の眠気も吹き飛ぶこと間違いなしの素晴らしい戦いを期待しましょう!