こんにちは。 昨日はオリックス×中日のオープン戦を見に行ってきました。 記事にしようと思ったのですが1-0で大島のソロHRのみというなんとも味気ない試合だったので記事にできませんでした。 前から思っていたのですが最近私が野球の試合を見に行くと全部ロースコアなんですけどどういうことなんでしょうか… さて今日はスタッツ分析です。やっと当ブログらしい記事になります。 2014年から言われている「錦織圭のサーブ向上」、特に今シーズンはブリスベン、全豪で二けたエースを取るなどビッグサーバーに変身したのでは?という意見も聞かれる中、ややその傾向は落ち着いてきたように思います。 一方でブリスベンラオニッチ戦では全18ゲームでブレークできないなどリターナーとして物足りないスタッツが存在していたのも事実。 それから2か月経ち、17試合を消化しました。ここですべてのスタッツを振り返り改めてサーブ向上は本物かを検証していこうと思います。 ここで注意点ですが、この記事は2月までのすべての試合のデータをまとめたものです。データは時々刻々と変わっていきます。 例えば次回のデ杯で極端なスタッツが出た場合5セットマッチですし大きく年間のスタッツの数字を動かすことになります。 ブレークポイントなどの局所スタッツを除けば17試合消化したので1試合当たりの最大変動幅は1~2%程度と推測されます。大分信用できるレベルに統計がたまってきました。 ただどちらかに一定の傾向が続いてしまえばあとで取り戻せないほどスタッツが動くことは容易に考えられます。 これが絶対的な指標ではなく、ある点を切り取った時に見られた景色であることには注意してください。 まず、ATPが出している公式スタッツには以下があります。 ・勝敗(勝率) ・タイブレーク勝敗 ・全エース(1試合エース率) ・全DF(1試合DF率) ・1stサーブ確率…A ・1stサーブが入った時のポイント獲得率…B ・2ndサーブの時のポイント獲得率(DFも含む)…C ・サービスキープ率…D ・1stサーブリターンポイント獲得率…E ・2ndサーブリターンポイント獲得率…F ・ブレーク率…G ・ブレークポイント勝率…H ・相手のブレークポイントをセーブした確率…I このスタッツ以外の有効性については来週インディアンウェルズが始まるまでに議論しようと思っています。 現状ATPが発表しているスタッツはこれだけなので、私たちがサーブ力強化を推し量るためにはここから読み取るしかありません。 一応錦織圭が2012年からトップランカーになったということで、2012~2015(今年は17試合分)の4年間を比較したいと思います。 それをまとめた表がこちらです。出典はいつものスタッツが載っている公式のページです。 http://www.atpworldtour.com/Rankings/Top-Matchfacts.aspx Dは閑話球題シリーズで取り上げた「推定キープ率」でこの記事で解説しています。要するに単純な確率モデルで考えたときにキープできる確率です。 ご覧ください。見違えるように数字がよくなっていることがわかります。 ややAの1stの確率が2014年以降落ちているのはサーブ改造の影響だと思いますが、その分をしっかりBとCがカバー。1stがよくなったことですべてのサービスゲームのリズムが平均的にはよくなっているというデータです。 平均的にはというところがミソで、だめなときはもちろんブレークされてしまいます。そこは注意です。 そしてサーブ1本でしのげるポイントが増えたことが如実に表れているのがIのブレークポイントのセーブ率です。 やはりラリーに持ち込まれるといくら錦織といってもミスや相手の強打で失うことも出てきます。 2014年からこういった場面でサービス1本で相手のリターンミスやエースを取れるようになったことが急上昇の要因の一つになっています。 このブレークポイントセーブ率70%の数字がいかに高いかということですが、今シーズンで言えばあのラオニッチと同じ数字です。あれだけのビッグサーバーと同じ数字というのは錦織のサーブがよくなっていることの一つの証拠と言えそうです。 トップ10ではラオニッチと並んで3番目、試合の多いトップ50に広げても12番目という高い数字です。 ただブレークポイントセーブに関しては単純に弱い相手に対してもたついた場合、それを地力でセーブすることで数字が高くなる傾向があります。単純なサーブ力向上の指標ではありませんので気を付けましょう。錦織の場合はサーブスタッツの全体がコンスタントに上がっているので十分指標としてサポートできる内容だと判断したので取り上げました。 17試合もやったことで、しかも速い全豪、遅いアカプルコを含めたことでバランスもとれてそこそこ信用できる値になってきました。数%ではありますがテニスにとっての数%は小さいようで大きいファクター。私はこれらのデータを含めてサーブ力向上は確実に言い切れるという判断をしています。 ちなみにエース率も2.6→2.6→4.3→5.8、DF率も2.5→2.8→2.4とほぼ横ばい。DFを抑えつつエースを量産しているのですからここからもサーブ向上がうかがえます。 そして今回記事を書く上で私も興味があったリターンスタッツについてです。これは驚きの結果が出ました。 わずかではありますがリターンスタッツが落ちてきています。 これは一つにはラオニッチとのビッグサーバーの対戦が以前より増えていることが理由なのですが、サーブスタッツ向上したからリターンにも集中できる…という一般論が適用されていない例だということがわかります。 ただ、これはある意味ではブレーク(リターン)に無理をする必要性がなくなったからでは?というのが私の見解です。 さっきのキープ率が78→78→84→87となっている件ですが、裏を返すと相手がブレークする確率は22→22→16→13と3年前の6割程度になっています。 つまりブレークされる確率が落ちたからこそ、1ブレークしちゃえば無理をする必要性がなくなるということで、2ブレークして1ブレークされて何とかセットを取るスタイルから、1ブレークしてオールキープしてセットを取るテニスに変化してきているという結果でもあります。 サービスゲームとリターンゲームは交互にやってくるので、全体としてのゲーム獲得率は単純に(D+G)÷2をすればほぼ正確に求まるのですが、その結果ゲーム獲得率は54→54→56→57と上昇しています。 ですのでこれでいいのです。もちろんブレークしたほうがより楽に試合を進められますが、今の錦織は圧倒してまで無理をするリスクの方が大きいということなのでしょう。 ちなみに2月に入ってからブレークされやすくなったのでは?という意見がよく見られますが、各試合のブレーク数は、5セットマッチの全豪を太字にすると 0,0,0,3,3,1,1,3,2,2,2,1,1,1,1,2,6 と、あのフェレール戦だけが異常だったとわかります。サーブ単体がよかったとはいえ、ストロークに問題があった全豪も意外とブレークされています。 ぜひ3月はビッグ4との対戦も加えて、より精度良いデータで再び議論できればと思います。