「108」。 この数字はとある選手にとってのキーワードである。 この数字に言葉を足してみよう。 「108連勝した後、負けた相手。」 この数字を叩き出した2010年、最絶頂にあった国枝慎吾選手が負けた相手。 それが現在の最大のライバルであり、ダブルスのパートナーでもあるステファン・ウデ選手である。 108連勝、字面にしても形容が難しい。実際に成した本人にしてみれば、決して楽な闘いではなかっただろう。 しかし、数字とは時に絶対である。勝利の数だけ、108人のプレイヤーが実際に負けてきたのだ。 勝者と敗者、どちらにしても「様々な」思いが交錯しただろう。 そして、負けた。ATPに比べて遥かに試合数の少ないITF車椅子テニスと云えども、この数字は滅多にお目にかかることはないだろう。 (あえて滅多にとしたのは、国枝さんですら超えられない壁が実際にあるからである。) そんな国枝選手の2010年の姿が、5年たった現在の錦織選手にオーバーラップするのは気のせいだろうか。 国枝選手にとって、108の勝利の後の敗戦は大きな財産であろう。 さて、それを顧みてアカプルコの敗戦を錦織選手はどう活かすのか。そう考えると、「次のトーナメント」がまちどうしくなる。 そして、そんな国枝選手や錦織選手の影に隠れがちな「彼女」も忘れてはならない。 「全豪でまた負けた」。さあ、そこからどう這い上がってくるのか。ダブルスのゴールデンスラムで納得できるのか。 つくづく、5月まで映像なしの生殺しが悔しい、今日此の頃である。