2014年、普通なら安全圏のはずの4000ptをきっちり稼ぎながらも近年稀に見る激戦に飲み込まれ、5年連続最終戦出場を逃してしまったフェレール。ラオニッチの棄権によって出番こそ回ってきたものの、結果は錦織への4連敗。マイアミ、マドリッド、パリと3度のMSでいずれも阻まれた宿敵へのリベンジはなりませんでした。錦織さえいなければ昨年もフェレールはきっちりロンドンの記念撮影に収まっていたことでしょうに。  迎えた2015年、フェレールは快調なスタートを切りました。決勝でベルディヒをストレートで下し開幕戦のドーハでタイトルゲット。しかし勢いに乗って迎えた全豪は、上位8シードを失ったことで序盤からタフなドローを強いられることに。3回戦でシモン、4回戦で錦織という最早罰ゲームとも言っていいドローでした。シモンはなんとか下しました。だがシモンにとことん粘られSFMを3度も落としてしまった死闘はフェレールの身体に深いダメージを与えました。おまけに足の爪を負傷してしまったのです。その状態で最早格上と化した錦織に叶う術はありませんでした。錦織に好き放題にストロークを叩きこまれたフェレールは最後まで反撃を試みたものの封じられ、10度目の対戦にして初めてストレート負けを喫してしまったのです。錦織戦は5連敗となりました。もう二人の格付けは済んでしまったのか?  全豪後しばしの休養を取り、リオデジャネイロでツアーに復帰したフェレール、準決勝で敗れたナダルとは対照的に倒すべき相手をきっちり退けて23個目のタイトルを手に入れました。だがこのリオデジャネイロはクレーコート、翌週に組まれていたのはハードコートのアカプルコでした。過去3連覇した経験がありますがそれは全てクレーコート時代のもの。ハードコートとクレーコートは全くの別物です。いくら250大会のブエノスアイレスよりポイントを稼げるとはいえ勝てなければ意味がありません。 そんな悪条件を覆し、フェレールは順調に勝ち上がりました。リオデジャネイロ決勝から中1日で行われた初戦を勝利、その後もリオからの連戦をものともせずに火水木金の4連戦を制して決勝まで進んできました。32歳の大ベテランを攻略しようとトミッチやハリソンといった若い力が挑みかかりましたが彼らも撃退。特にハリソン戦は1セット取られてから圧巻の6-0,6-0という驚異の逆転劇で決勝に進んできました。だが決勝の相手は再び錦織…  フェレールは立ち上がりから全力で挑みます。今日も錦織の攻撃センスは一級品で、いきなり最初の1ポイントをドロップショットで奪う天才的なショット選択を披露してきましたが、15-40のピンチを凌いでキープ成功。1ポイント毎に激しいラリーとなりますがフェレールも一歩も引きません。迎えた第4ゲーム、錦織が不運な判定に乱れてDFを犯した隙を逃しませんでした。ブレイクに成功してまずフェレールが先行します。  錦織の得意パターンは好き放題に攻撃的ショットを打ち込むか、もしくはバックハンドのクロスラリーからの様々な展開。このパターンに持ち込まれたら過去の戦いの二の舞です。それを避けるためにフェレールは錦織のリターンで攻められないようにサーブをボディに打ち込み、ストローク戦でも先に先に攻め込んでしのいでいきます。だが錦織のバックハンドも負けじと炸裂しフェレールからポイントをもぎ取ります。フェレールがバックのDTLを読んで完璧な返球をしても、そこからさらに錦織がDTLを叩き込んできます。このセット6度目のBPをしのげず、錦織にブレイクバックを許してしまいました。 Watch: After a slow start, Nishikori starting to hurt Ferrer from the back. Breaks back for 3-4 1st set. #ATP http://t.co/mk3vyE4JeH— TennisTV (@TennisTV) 2015, 3月 1  それでも次のポイントに向かって突き進むのがフェレール。再びラリーに打ち勝って15-40とチャンスを作ると錦織がイージーなボレーをミスしてくれました。5-3とリードを奪うと次のゲームをラブゲームで取ってセットアップ。勢いに乗ったフェレールはリターンエースを奪うなど錦織コートに次々と強力なショットを叩き込み、第2セット2度ブレイクを奪って3-0としました。ようやく連敗脱出か?  まだ試合は終わっていませんでした。フェレールがラリーに打ち負けピンチを背負うとドロップショットをドロップショットで返される技ありのプレーであっという間に1つブレイクバック。直後のゲームでは再びBPを握ったものの観客からブーイングと励ましの声援を受け取った錦織が踏ん張ります。4-3までは行ったものの、第8ゲーム攻めこむ錦織を押さえ込めず、ついに2度目のブレイクバック。 Watch: How to break serve, Kei Nishikori style. Simply brilliant from the Acapulco top seed. #ATP http://t.co/7lsxF1AHnf— TennisTV (@TennisTV) 2015, 3月 1  フェレールにとっても非常にしんどい戦いになっていました。勝負の第9ゲームは4度のデュースに。フェレールはこのゲーム2度目のBPを握ったものの、錦織に完璧なセカンドサーブを決められ当てて返すのが精一杯。しょぼいロブとなった返球は錦織のチャンスボールになりましたが、叩き込んだ錦織のフォアハンドは大きくサイドアウト。勝った…  直後、追い詰められた錦織のフォアハンドが火を吹きました。ロングラリーを強引に突破し、リターンエースも決めて攻め込むとプレッシャーからかDFを冒してしまうフェレール。これを逃してくれる錦織ではありません、再びフォアハンドが炸裂し3度目のブレイクバック。普通なら一気の大逆転劇が起きてもおかしくない場面でしたが、それでもフェレール不屈の闘志は最後まで折れませんでした。錦織のミスを誘ってBPを握ると、前に詰めた錦織に対して絶妙のロブ!両者合わせて10度目のブレイクで勝負は決しました。最後のゲームをキープし、錦織戦の連敗をついに止めたのです。 David Ferrer won his fourth #MexicoOpen title on Saturday with 6-3 7-5 win over Kei Nishikori: http://t.co/wUAlEpE1xS pic.twitter.com/FIFiZG4pFY— Sky Sports Tennis (@SkySportsTennis) 2015, 3月 1  クレーコートとハードコートで2週連続決勝進出は88年のA・ゴメス以来27年振りの快挙でした。それだけでも凄いのですがそこでさらに2週連続優勝。レンドル以来30年ぶりの大記録となったのです。今年の戦績も18勝1敗とし、勝ち星勝率ともに2015年の単独トップに立っています。  錦織は今日4位に立ちます。だが今のランキングは大きく抜けた二人と、3位から9位がわずか1335ポイントの間にひしめき合う大混戦。その先頭を走る錦織に対して今度こそ勝ってやるとばかりに、今日のフェレールも、全豪のバブリンカも、ブリズベンのラオニッチも挑んできています。研究を重ね気合充分で挑んでくる彼らを跳ね返すことは簡単ではありませんが、それを成し遂げた時、さらに上の順位が見えてくることでしょう。