ドバイのセンターコートは異様な雰囲気となりました。コートチェンジの度にロジャーコールがスタンドから沸き起こり、その中に負けじとノーレコール(Nole:ジョコビッチの愛称)が混ざります。誰もがこの二人の激突を待っていました。37度目の頂上決戦の始まりです。  最初にBPを握ったのはジョコビッチでした。フェデラーのストロークがことごとくネットにかかって15-40のチャンス。しかしフェデラーはリスク覚悟のセカンドサーブ、完璧なファーストサーブをそれぞれ打ち込んでこれを見事に凌ぎます。両者キープを続ける中、試合が動いたのは第8ゲームでした。フェデラーは30-30からフォアハンドの高速逆クロスを打ち込んでBPを握るとジョコビッチのバックハンドがアウトとなり一発でブレイク成功。第1セットはフェデラーが6-3で先取。  だがこの二人の対決はトップギアで攻めこむフェデラーに対して徐々にジョコビッチが逆襲していくのが鉄板パターン。第2セットは追いかけるジョコビッチが押しこむ展開となりました。フェデラーのネットプレーはジョコビッチによって完全に攻略され、第2セットは5/12とたった40%しか決まりませんでした。ストロークの打ち合いとなればジョコビッチが有利に試合を運べます。それでもなんとかストレートで決着をつけたいフェデラーは第7ゲームでバックハンドのDTLを2本連続で突き刺し0-30としましたが、ジョコビッチがBPを背負うことはありませんでした。  第8ゲーム、ジョコビッチがフェデラーを追い詰めます。ロングラリーでポイント先行し、フォアのDTLを叩き込んで15-40。しかし今日通算9000エースを達成していたフェデラーのサーブがここ一番で火を吹きました。次々と突き刺さるサーブをジョコビッチは返せません。サーブ4本叩き込んであっという間にキープしてみせたのです。  ピンチは凌いだものの依然としてジョコビッチペースは変わらず。第10ゲームでもフェデラーの不用意なドライブボレーをきっかけに再び15-40とチャンスを作りました。今度はBPではありません、SPです。1ポイントでも失ったらセットが終わる状況でフェデラーはベースライン上に完璧なボレーを決め、さらにセンターにピッタリ1stサーブを入れてデュースへ。デュースではワイドに2本続けてサービスエース!  ピンチの後にチャンスあり。ジョコビッチはあっさり40-0としたものの、らしくないミスが続いてデュース、さらにDFまで飛び出しフェデラーにBPを与えてしまいます。今日2度目のBPもフェデラーは逃しませんでした。深いリターンでチャンスボールを作るとフォアハンドを一閃。流石のジョコビッチも見送るしかありませんでした。フェデラーがブレイクして6-5。  このままでは終われないジョコビッチは土壇場で今日7回目のBPを作ったものの、フェデラーはこれもしのいで試合終了。ジョコビッチのBPは7本とも凌ぎ、逆に自身のたった2回のBPは2つともものにしたフェデラーがドバイ7度目の優勝を果たしています。 Federer: 84th title in career. 7th title in Dubai. 20th win vs Djokovic pic.twitter.com/NO32nmiLmz— Luigi Gatto (@LuisGatTWI) 2015, 2月 28 ところで勝利に花を添える通算9000本エースも達成したフェデラーですが、その記録はちょっと異例のものとなっています。  1試合当たりのエースはとても少ないのです。しかしその技術は誰もが認めるところ。9000本エース達成にあたって色々な選手がコメントしています。ラオニッチ、バブリンカ、錦織らがコメントを出している記念PVがあるので英語のわかる方は見てみるとよいと思います。選手達のコメントを総合すると、同じトスからよくこれほど多彩なサーブを打てるものだ…という感じになるのではないでしょうか。スピードこそ200キロそこそこですが、全く同じフォームからセンターにもワイドにも自由自在に打ち込み対戦相手にコースを読ませません。フェデラーの1stサーブはこれまでずっと勝負所でフェデラーを支えてきましたし、引退するその日まで今後も頼れる相棒となるでしょう。 Congrats to @rogerfederer on becoming the 4th player to surpass 9000 aces Read & Watch Tribute http://t.co/Zgl5PjGgzl pic.twitter.com/NesBP0X6UV— ATP World Tour (@ATPWorldTour) 2015, 2月 28