アカプルコの2回戦で前年優勝者のディミトロフが敗れるという波乱がありました。メンフィスで錦織の初戦の相手だった世界ランク169位のハリソンが相手でした。敗退の予兆がなかったわけではありませんでした。1回戦からディミトロフは好調とは言えず、ブレイクポイントを16本連続で逃したり、サービスゲームを4連続で落としサービング・フォー・ザ・マッチでブレイクバックを許してそのセットを奪われたりとピリッとしない出来だったのです。  昨年中盤までのディミトロフは調子の波こそ大きかったもののコンスタントにいい成績をたたき出していました。全豪ベスト8、アカプルコ優勝、ブカレスト優勝、ローマMSベスト4、クイーンズ優勝、そしてウィンブルドンベスト4。この結果世界ランキングは一時8位まで上がりました。しかしどうも全米以降よい成績を残せていないのです。  全米終了時、最終戦争いでディミトロフはブービーの10位につけていました。マレーはディミトロフより後ろにいたのです。だがマレーが怒涛の6週連続参戦で一気に追い上げたのとは対照的に、ディミトロフはストックホルムの150pt以外ほとんどポイントを加算できずに敗れていきました。北京やバーゼルなどは対戦相手でわかるようにドロー運も悪く、仕方ないかなという気もしていたのですが勝てないでいるうちに負けの内容まで悪くなってきたのです。格上選手の繰り出す緻密なプレーにディミトロフは完膚なきまでに破られてしまいました。パリのマレー戦、ブリズベンのフェデラー戦などは相手の戦略に完璧にはまってミスの山を積み上げた結果の完敗でした。  ディミトロフは全豪後ラケットを変更。ウィルソンを辞めて、ガールフレンドのシャラポアが使用しているHEADのラケットを採用(まだ正式契約は結んでいないため塗装前のラケットを使っていると思われる)など試行錯誤を続けています。だがプレーレベルが戻ってくる形跡はありません。先々週に参戦したロッテルダムでも初戦から苦しみ、1回戦はどうにかMPから生還し逆転勝ちを収めたものの、2回戦は好調ミュラーの前に敗れてしまいました。前年優勝のアカプルコでなんとか復調のきっかけを掴みたかったのですが…  来週のランキングでは11位となるディミトロフ。ディミトロフだけでなく怪我で離脱中のチリッチも着実にポイントを減らしているため、両者は逆向きのデッドヒートを展開しているような形となっています。9位以下との差がどんどん離れる一方ですが、追う立場のはずのツォンガやグルビスも絶不調だったり怪我だったりとポイントを伸ばせず、総崩れとなっている状況です。上がってくる選手はいない、つまりまだ時間はあります。F・ロペス、シモン、アンダーソンら15位あたりで約2000ポイントを稼いでいる選手達に追いつかれる前になんとか立て直すことができるでしょうか。  デッドラインは720pt失効のあるウィンブルドン。それまでに立て直せていないと、ディミトロフは大きく後退することになるでしょう。 【おまけ】  ディミトロフとは対照的に錦織は2回戦を快勝。着実に優勝へ向けて前進しています。今日一番のビッグプレーをどうぞ。 Must-watch! A JOKE of a pick-up by @keinishikori off a decent #Lu drop shot. INCREDIBLE speed & racket head control. http://t.co/e52fEByEqn— TennisTV (@TennisTV) 2015, 2月 26