国際的なスポーツには民族対立や国家対立がつきものです、報道されることは少ないですがテニスも例外ではありません。特にデビスカップやオリンピックを取り仕切るITFにとっては結構重要な問題となってきます。  だが最も振り回されるのは選手自身でしょう。たとえば昨年9月に行われたデビスカップのプレーオフにはイスラエルやウクライナといった国内外に紛争を抱える国々も参加していましたが、彼らは相手国の抗議によりホームでの開催を認められず中立地開催となりました。イスラエルVSアルゼンチンはアメリカで、ウクライナVSベルギーはエストニアで開催されていて、いずれも本来アウェーになるはずだった国が3勝2敗で勝利しています。デビスカップはホームの大声援が試合を左右する一つの要素となっているので中立地開催は大打撃です、これがホームで行われていれば結果は違ったかもしれません。ウクライナのスタコフスキーはこの決定に抗議し直後に対戦国ベルギーで行われたチャレンジャー大会を棄権してしまいました。 Sergiy Stakhovsky withdraws from Mons Challenger to protest relocation of Sept. #DavisCup tie: http://t.co/dW39bPrinj pic.twitter.com/fBj8kEQupi— TENNIS.com (@Tennis) 2014, 10月 2  そして今週の水曜日、残念なニュースがありました。ATP250のモンペリエ大会に出場していたチュニジアのジャジリ(全豪で3回戦まで進出した選手です)が、イスラエル選手との対戦を意図的に避けたのではないかという疑惑です。イスラム系の諸国はスポーツ界で徹底してイスラエルと対戦することを避けていますが、テニス界はそのような行為を認めていません。イスラエルのトップ選手、セラとの対戦を次のラウンドに控えていたジャジリは第1セット先取後に試合を棄権してしまいました。理由は肘の負傷とのことで、それを理由にイスラエルの別の選手(エルリッチ)と対戦する予定だったダブルスも棄権しています。ジャジリの相方はM・ロペスというダブルスのトップ10選手で、優勝の可能性も十分あったにも関わらず…  ATPやモンペリエ大会運営側は、あくまでジャジリの棄権は医者の診断に基づくものであり「現時点では」問題視する予定はないとしていますが、同時に慎重に調査を進めているようです。残念なことに、ジャジリには前科があるからです。2013年、ウズベキスタンのタシケントで開催されていたチャレンジャー大会でジャジリはイスラエル選手(ワイントラウブ)との対戦を前に棄権。これがチュニジアのテニス協会による指示として出されていたことが判明してしまい、チュニジアは2014年のデビスカップ参戦を許されませんでした。  1年間デビスカップに出ないぐらいどうでもよさそうに見えますが、これがオリンピックが絡む話となってくると問題が変わってくるかもしれません。デビスカップに規定数参戦しないとオリンピックに出られないという仕組みが存在しているからです。オリンピックに出場できるのは世界ランク上位56人+α。現在65位でキャリアハイ更新中のジャジリは来年まで頑張っていれば十分出場の可能性があります。2013年以降でまだ1度しかデビスカップに参戦していないジャジリの運命はどうなるのでしょう。今年規制されたらもう後はありません。 Questions about Malek Jaziri´s withdrawal sparks ATP involvement http://t.co/mwZJEpzhzW pic.twitter.com/9ZPajvmgOr— Tennis World English (@TennisWorlden) 2015, 2月 5  チュニジアのデビスカップ参戦禁止を言い渡した際、ITFのリッチ・ヴィッティ会長は以下のような声明を発表しています。 “There is no room for prejudice of any kind in sport or in society. The ITF Board decided to send a strong message to the Tunisian Tennis Federation that this kind of action will not be tolerated by any of our members,” 過ちが繰り返されないことを願うばかりです。