今日はこの度リクエストをいただいていたフェデラーの敗退について、ナダルの敗退と一緒に取り上げて振り返ってみたいと思います。  さてまずは一応ベスト8という結果は残して敗れたナダル。ナダルは07年以降続けている連続ベスト8(二度不出場有)を達成した上での07年、10年、11年に続く4度目の準々決勝敗退となりました。初めて当たったトップ10選手に敗れて大会を去るというのはナダルの全豪における鉄板負けパターンなのです。07年は当時16位のマレーをフルセットで下した後フェルナンド・ゴンザレスに敗れて敗退。10年はマレーに、11年はフェレールに敗れての敗退でした。  試合自体は過去17連勝していたはずのベルディヒに対して全く見るべきところのない完敗で、これは過去の敗戦でも同じでした、敗退した4度の準々決勝で一度もセットを取ったことがないのです。特に2010年のマレー戦敗戦(しかも最後は棄権負け)は、前年全仏でまさかの敗退を喫して以降続いていた不振の現れとみる者も多く、ナダルはもう終わったという扱いもされたものです…そう考えていた人達はその後のクレーシーズン4連勝で唖然としたでしょうが。以降ナダルのこの時期の不調は当てにならないという考えが定着しました。その後11年も、13年も、春になれば当たり前のようにナダルは復活してきたのです。 ならば今年も復活すると思いたいところですが、今回のナダルに関しては13年の時に比べると懐疑的な考えを持つ人が多そうな感じ。その根拠はもちろん昨シーズンのクレーにおける不調です。この不調ははっきりデータとして表れています。また全仏以外の2勝、マドリッド(決勝錦織戦)やリオデジャネイロ(準決勝アンドゥハル戦)も薄氷の勝利でなんとか優勝していて、全くもってナダルらしくないクレーシーズンでした。それが今後も続かないという保証はありません。今後ナダルは再来週のリオデジャネイロとその翌週のブエノスアイレスに参戦します。赤土の上で躍動する、強すぎるナダルをまた見ることができるのでしょうか。断トツの優勝候補ではありますが、逆にもし2大会とも早期敗退すれば一気に5位転落も? Rafa Nadal se despide del #AustralianOpen, tras caer ante Berdych por 6-2, 6-0 y 7-6. Ahora más que nunca #VamosRafa pic.twitter.com/jmplA9tD54— bwin España (@bwin_es) 2015, 1月 27  一方全豪では11年連続のベスト4入りを果たしていたフェデラー。2回戦のボレリ戦で小指を痛めてMTOを取り、第1セットを失いながらその後3セットを連取して勝利していました。迎えた3回戦、相手はセッピ、過去10勝0敗の相手を倒すことは容易いミッションに見えました。  フェデラーにとっては悪い条件がそろっていました。まずそこそこ風が吹いていました。普段のフェデラーなら多少サーブとバックハンドに影響をきたす程度の風だったでしょうが小指の違和感を引きずっていたのでしょう。完全にストロークが死んでしまいました。  だがストロークが死んだ程度で中堅選手に勝てないフェデラーではありません。ストロークで勝てないとなると、ストロークを長引かせず早めに仕掛けて1stサーブとネットプレーで強引にポイントを量産して凌ぐのが昨年1年間フェデラーを救ってきたスタイル。ところがこれは最初のうちは通用してたのですがすぐに効果を失ってしまいました。理由は二つ。まず大前提としてフェデラーのアプローチが甘すぎたこと、フェデラーはミスを怖がってフォアハンドのアプローチすら甘いコースに打たざるを得なかったのです。そしてもう一つは、セッピがカウンター型の選手だったこと。適当に攻め込んでゴリ押ししようというスタイルを最も返り討ちにしやすいプレースタイルの選手でした。  それでもなお、セッピにとっては簡単な勝利ではありませんでした。第1セットも第2セットもサービング・フォー・ザ・セットで何度もミスを犯しました。おそらくプレッシャーによるものでしょう。第1セットはなんとか逃げ切りましたが第2セットはフェデラーのフォアハンドがネットに当たってポトリと落ち、ブレイクバックとなってしまいました。まるでテニスの神様がフェデラーに力添えでもしたのかと思わせる光景でした。  だが神様の助太刀もむなしく、第2セットのタイブレークはフェデラーが4-1とリードしたところから覚醒し好プレーを連発したセッピがもぎ取ります。ネットプレーすら封じられたフェデラーは完全にポイントを取る術を失っていました。フェデラーは観衆の大声援を背になんとか第3セットを取り返し、一旦はゲーム内容もよくなっていたかのように見えましたが、続く第4セットは再び苦戦。後サーブのフェデラー側には次第に重苦しい雰囲気が満ちていきます。  これまで十数年、フェデラーを最後に支えてきたものは勝負どころのサーブです。これが決まればどんな苦境でも凌いでみせるのですが、最後のタイブレークのフェデラーは弱気になっていたのでしょうか、せっかくリードしたのに痛恨のダブルフォルトでリードを吐き出してしまいました。その苦境を見かねてまたしてもテニスの神様が微笑むとバックハンドが一瞬輝きを取り戻し、見事なライジングがコートを切り裂き再びフェデラーリード。が、その後またサーブが入らず、博打気味にネットに詰めたフェデラーに対してセッピ渾身のパッシングショットが炸裂、セッピが連続ミニブレイクでMP!  最後のポイント、フェデラーはフォアのDTLへ厳しいショットを放ってネットへ詰めます。セッピが必死に打ち返したパッシングショットは一瞬苦し紛れに見えたものの、奇跡のように完璧な軌道を描き、ライン際へ落ちました。セッピ自身キャリアで最高の一打だったのではないでしょうか。  トータルポイントは144対145。負けたフェデラーが1ポイント上回っているほどの大接戦でした。フェデラーは得意なはずのタイブレークを2度とも失ったのが最終的には敗因となってしまいました。 Federer is OUT of the #AusOpen, losing in four sets to Seppi. It's the 1st time since 2003 Roger's not made the SFs. pic.twitter.com/mIF28uzy9v— bet365 (@bet365) 2015, 1月 23  皆さんの注目としては、これが衰えの現れかどうかが一番問題だと思いますが、こういう負け方は2010年ぐらいからちょくちょく見られていたので今更心配することではないとも思います。フェデラーが格下に負けるときっていつもこんなものです。2週間前のブリズベンでは次世代トリオを退けて優勝しているのですからプレーレベル自体はまだ落ちていないはず。フェデラーに限らずベテランになればどのような選手も調子の波は大きくなります、これは仕方ないことです。そのうちこのようなプレーをしてしまう頻度が増えていって、緩やかに引退へ向かっていくのでしょう。