男子準決勝の残り1試合などが行われ、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が昨年優勝のスタン・バブリンカ(スイス)をフルセットの末に下し、通算5度目の全豪タイトルを目指し、日曜日の決勝でアンディ・マレー(イギリス)と戦うことになった。  ここまで2人の対戦成績はジョコビッチの16勝3敗、ここ7年に限れば14勝1敗と圧倒的な数字だったとはいえ、十分に予想された接戦だった。最近3度のグランドスラムではいずれもフルセットにもつれ、しかも一昨年、昨年の全豪オープンのファイナルセットは12-10でジョコビッチ、9-7でバブリンカという激しいつばぜり合いを演じてきた。バブリンカは昨年の優勝に加え、年末には、ロジャー・フェデラーとともに祖国スイスに初めてデビスカップのトロフィーを持ち帰っている。  自信のこもった立ち上がり。片手打ちバックハンドからの強烈なショットを、クロスにダウンザラインに飛ばし、3-3で迎えた第7ゲーム、フォアハンドを3本、角度を刻みながら攻め込んでブレークした。問題はその直後のバブリンカの攻めだ。第8ゲームのサービスゲームの初球に、いきなりサーブ&ボレーを仕掛けてミス。ジョコビッチから先に奪ったリードを意識しすぎたのだろうか。いつにない戦術ミスが尾を引き、すぐラブゲームでブレークバックを許したのは痛い。逆に勢いづいたジョコビッチが、第10ゲームでさらに15-40とプレッシャーをかける。ここを2本のサービスエースで切り抜けたあたりがいまのバブリンカの強さではあったが、余分なプレッシャーを受け、攻めのリズムをつかみ切れぬままタイブレークを1-7で落とした。  錦織圭との準々決勝でもそうだったが、それでもいまのバブリンカには冷静さが加わっている。第2セットも第6ゲームを先にブレークした。続く第7ゲームの最初のポイントを奪われ、またかと思われたが、今度はそこからボールを繋いで守り切ってセットカウントを1-1にした。  ジョコビッチの左右の安定感は衰えていない。両サイドから繰り出す反撃には強弱のメリハリがつけられ、そんな相手との長丁場の5セットマッチは挑戦者には果てしない旅に見えるだろう。第3セット、3-0までリードされたバブリンカは懸命に食い下がり第5ゲームをブレークバックしたものの、第10ゲームの40-15から崩れてしまい、ダブルフォルトをきっかけに4ポイント連取されて再びリードを許した。  第4セットをバブリンカが奪って3年連続のフルセット勝負。ファイナルセットの第1ゲームをどう見るかは難しいところだろう――3度のチャレンジで3度とも判定が覆るという複雑な展開の中で、バブリンカはブレークポイントを掴みながら生かせなかった。生かせなかったことで限界が訪れたのか、既に限界が来ていたから生かせなかったのか……。第2ゲームで、バブリンカは2本のダブルフォルトでブレークを許しジョコビッチにそのまま6-0と突っ走られた。  最終的に、ジョコビッチの鉄壁の両サイドを崩すことはできなかったが、バブリンカの強烈なショットにさらに自信がまぶされ、内容的にはこれまで以上に肉薄してきた印象だ。この敗戦によって週明けの世界ランキングは現在の4位からは後退するが、今年はまだまだ活躍しそうなプレーだった。  決勝のジョコビッチとアンディ・マレー(イギリス)の対戦成績は15勝8敗でジョコビッチがリード。この大会では2度の決勝を含め3度対戦し、いずれもジョコビッチが勝っている。  また、女子ダブルス決勝も行われ、ノーシードのベサニー・マテック サンズ(アメリカ)とルーシー・サファロバ(チェコ)のペアが優勝した。 文:武田薫