男女の準々決勝2試合ずつが行われ、第5シードの錦織圭は、昨年の優勝者で第4シードのスタン・バブリンカ(スイス)にストレートで敗れ、全豪オープン初のベスト4進出はならなかった。  バブリンカとはこれまで1勝2敗。昨年の全米オープン準々決勝での鮮やかな逆転勝ちが好印象の残っている対戦だったが、この日のバブリンカは目の色が違った。錦織にリズムをつかませまいと、立ち上がりから果敢なサービスゲームを展開し、、リターンからの長い打ち合いを避けて早目の勝負を勝負を仕掛けてきた。左右ともに強烈なショット。打ち合いになれば、持ち味の片手打ちバックハンドからのカウンターで脅かし、第4ゲームにサービスブレークしてプレッシャーをかけた。一方、錦織も第8ゲームのサービスゲームで15-40と追い込まれながらそこをキープして反撃を窺ったが、第1セットはそのままバブリンカが奪った。  試合のカギは第2セットだった。バブリンカは昨年の全米で第1セットを奪い、そこから守りに入り打ち合いを挑んで墓穴を掘った。錦織とすれば、第2セットを奪い返して長丁場に持ち込めれば、逆にプレッシャーをかけることもできた。ただ、ここまでハイレベルの戦いになると、同じ轍は踏まない。第2セットの第2ゲーム、錦織はいきなりダブルフォルトを貰い、バックハンドのリターンエースで繋ぎ0-30と迫ったのだが、バブリンカはここから時速210㎞のサービスウィナー、さらにサービスエースを2本続けて反撃を許さなかった。 「きょうは最初の2セットでよく集中できていた。積極的な姿勢をキープできたし、ケイのバックを攻め続けることで、彼を守りに追い込むことができた。ストレートで締めくくれたのがよかった。第4セットまでもつれれば、それはまた別の流れになっていた」  第2セットの2-2で迎えた錦織のサービスゲーム、第5ゲームは大きな山場だった。15-30からこの日の試合で最も長い24本のラリーの応酬。その22本目、バブリンカのバックハンドが鋭い角度でクロスに走り、追いすがる錦織のラケットがすっぽ抜けた。そこで15-40となり、先にブレークされた。第7ゲームには3本のブレークポイントをかわし、第10ゲームには2本の長いラリー戦を制してブレークバック・ポイントまで迫ったものの、あと一歩、バブリンカの集中力に逃げ切れられた。  錦織は、これまで2セット・ダウンからの逆転勝ちが2度あり、第3セット、サービスブレークを1度ずつ交わして入ったタイブレークでも粘った。1-6とリードされながら6-6まで追いつき、もしかしたら……スタンドにそんな気を起させたのが、昨年までとは違う錦織圭の現在の力だ。ただ、第3セットの12ゲームのうち、9ゲームがラブゲームという流れは、打ち合いながらリズムを刻み試合を作り上げたい錦織好みのものではなかった。サーブ&ボレーで何とか突破口を開こうとし、実際にそれは12回中11回と成功しているのだが、決定的な流れを得るまでには至らなかった。  この大会のベスト8は3年前に続き2度目。今年の8強にはまったく違う中身の濃さがある。グランドスラムで初めての第5シード、すなわち1週目に挑戦される立場を味わってから、2週目に頂点に向かうプロセスを実感し、その手応えもあった。これからの大きな自信になるはずだ。 「きょうはサーブが良くなかったので、リズムがつかめなかった。相手は最後まで攻撃的で、素晴らしいテニスをしていた。見事としか言いようがないですね。勝ちたかったけれど、(この大会は)全体的にはよかったと思う。いままでにない位、警戒された中で勝つこともできた。新たな経験を次のグランドスラムに生かし、ベスト4、決勝まで入りたい」  テニスのグランドスラムは、4年に1度のオリンピックとは違い、1年間に4度ある。もっと先まで見たかった気持ちはやまやまだが、上々のスタートを切ったとしてもいいのではないだろうか。  もう一つの準々決勝では、やはり若手の旗頭ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)が第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)に挑んだが、武器のサーブで崩すことができず、準決勝はジョコビッチとバブリンカ、アンディ・マレー(イギリス)とトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)のベテラン勢で戦われる。  女子は、19歳のノーシード、マディソン・キーズがビーナス・ウィリアムズをフルセットの末に倒し、妹のセレナ・ウィリアムズ(以上アメリカ)と準決勝で対戦する。 文:武田薫