男女のベスト8が出そろい、錦織圭が2012年以来、3年ぶり2度目の準々決勝進出を決めた。この大会で初めてのセンターコートに入った錦織は、ベースラインプレーヤーの第9シード、ダビド・フェレール(スペイン)との打ち合いを完全に制圧、まったく危なげないプレーでストレート勝ち、準々決勝では昨年の全米オープンでフルセットの末に倒したスタン・バブリンカ(スイス)と対戦する。  風格すら漂う立ち上がりだった。フェレールとはこれまで6勝3敗。デビューを飾った2008年の全米オープンで破り、昨年は4戦4勝という自信が後押ししたのだろう。フェレールのサービスゲームで始まった第1セットの第1ゲーム、40-0から2度のデュースまで持ち込んで感触を思い出した。この日は朝方の雨で第1試合は屋根を閉じていたが、その後は屋根も開いて〈オーストラリン・デイ〉の祝日にふさわしい好天。時おり風が吹きつけたが、フェレールはやはり錦織のリターンを警戒していた。第3ゲームに2本のダブルフォルトでサービスブレークを献上しては、錦織の自信は深まるばかり。第1セットのファーストサーブからのポイント率は87%(フェレール50%)、相手のファーストサーブのリターンからのポイント率も50%(フェレール13%)と、早々に一方的な試合の流れを作り上げてしまった。 「きょうはけっこう早い段階で、気持ちよく打ち合っているという感触がありましたね。ここまでの格下の選手との対戦とは違って、やはりプレッシャーがなくなったせいかと思います」  第2セットは立ち上がりに三つのダブルフォルトで第1ゲームにブレークを許したものの、慌てず騒がず、すぐにブレークバックして流れを戻し、第8ゲームをブレークして勝利を固めた。これまでの6勝はいずれもフルセットの末の勝利だったが、この日はウィナー数で43対14、サーブの最高時速201㎞をヒットし、所要時間2時間7分の非の打ちどころのないストレート勝ち。フェレールも、まったくお手上げの表情だった。 「きょうのケイはすごく良かった。これまでのぼくとの試合では最高の出来だったと思う。ただ、準々決勝はバブリンカだし、ナダル、ジョコビッチがいるから何とも言えないけれど、これからの試合はどれも接戦になるのは間違いない」  最終日までを占うのは気が早いと釘を刺したフェレールだが、この日の錦織のプレーで二つのことが確認できただろう。これからはセンターコートが戦いの場になるが、球脚が速いと言われる舞台への対応ができたこと。もう一つ、挑戦を受ける立場の1週目から挑戦していく2週目への切り替えができたこと――まだ早いとは言え、ここから先の予想の楽しみを味わうことは別に悪いことでもないだろう。  次の対戦相手はバブリンカで、その先の準決勝の相手はジョコビッチかラオニッチ。そこを突破できれば、決勝の相手はベルディヒ、ナダル、マレー、キリオスのいずれかになる。この顔ぶれの中で、錦織が直近の対戦で勝てなかったのはナダルだけで、マドリッドの決勝で敗れたナダルとの試合は主導権を奪いながらの途中棄権だった。今大会のナダルは病み上がり……。一度も対戦のない地元の新鋭キリオスが気になるが、そんな先まで心配するのはさすがに気が早いだろう。いずれにしろ、視界はきわめて良好。いままで静観していた海外メディアも、ようやく重い腰を上げてきた。  女子は、第1シードのセレナ・ウィリアムズ(アメリカ)が昨年の全仏オープンで敗れたガルビネ・ムグルッサ(スペイン)に苦しめられながらも逆転勝ち。昨年の準優勝者ドミニカ・チブルコバ(スロバキア)は故障からの復活を狙ったビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)をフルセットの末に下した。好調のビーナス・ウィリアムズ(アメリカ)が第6シードのアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)を倒して、ノーシード対決を制した新鋭のマディソン・キーズ(アメリカ)とともに、5年ぶりに8強入りを果たした。 文:武田薫