錦織圭は第1セットを落としながら冷静に建て直し、そこから3セットを連取。実力を発揮して4年連続の4回戦進出を決めた。  相手のスティーブ・ジョンソン(アメリカ)は身長188㎝、体重86㎏の恵まれた体格で、破壊力のあるファーストサーブと強烈なフォアハンドが持ち味だ。打ち合いからペースをつかみたい錦織の立ち上がりが注目されたが、3度目の対戦だけに相手も集中してきた。  錦織が第3ゲームを先にブレークすると、ジョンソンはバックハンドのスライスで必死に防御しながら、第6ゲームにブレークバックしタイブレークに。ここでもジョンソンに先にミニブレークされたものの、8ポイント目に追いついて流れをつかんだかに見えた。しかし、7-7から痛恨のダブルフォルトを犯してこのセットを落とした。  意外な展開に、錦織は落ち着いていた。第1セットでは、相手のフォアハンドを意識しすぎて窮屈なバック狙いになり、攻撃がぎこちなかった。そこを修正し果敢な攻撃に切り替え。相手はファーストサーブが外れれば極端に威力が落ちる。第2ゲーム、ダブルフォルト2本からチャンスをつかんだ錦織は、2度目のデュースで長いラリーに引きずり込んでブレークに成功。ここから速いテンポで相手のフォアの威力を封じ、流れは一方的になった。6-1、6-2、6-3。第3セットからのジョンソンのファーストサーブの確率は52%に下がり、さらにセカンドサーブからのポイント率も25%にまで落ちた。錦織のリターンの威力に吹き飛ばされた格好だ。  次の相手、第9シードのダビド・フェレール(スペイン)には昨年だけで4連勝。16強に残った選手を見回せば、直近の対戦で負けたのはノバク・ジョコビッチ(セルビア)、ミロシュ・ラオニッチ(カナダ)、そして昨年春に途中棄権になったラファエル・ナダル(スペイン)だけだ。夢は膨らむが、ここからは相手が変わってくる。 「これまでのトリッキーな対戦相手とは違って、じっくり打ち合う相手になります。そうなれば、自分のストロークのレベルも上がるかなと思います」  戦う舞台も変わる――1回戦はマーガレット・コート・アリーナ(MCA)、2、3回戦はハイセンス・アリーナだったが、2週目からはセンターコートかMCAに移り、これらのコートサーフェスは他のコートより球脚が速いと言われる。コートスピードに関して選手の感じ方は必ずしも一致せず、好調を維持するラオニッチはこう話した。 「ハイセンスとMCAがそんなに早いとは思わない。少なくとも練習コートよりはずっと遅い。ただ、センターコートはちょっとだけ速いという話は聞いている」  今シーズンのグランドスラム幕開けの大会、初めての第5シードという大きな変化を背負って臨んだ1週間だった。挑戦者から挑戦される側に立場を変え、サービス強化に取り組んでゲーム作りも改造しながら結果を手にした。ここからはリラックスした、のびのびしたプレーが見られるのではないか。  男女のベスト16が出そろい。男子は第1シードのジョコビッチ、第4シードのスタン・バブリンカ(スイス)らが順当に勝ち上がったのに対し、女子はウィリアムズ姉妹、昨年の準優勝者ドミニカ・チブルコバ(スロバキア)、ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)らが勝ったものの、第4シードのペトラ・クビトバ(チェコ)は新鋭のマディソン・キーズ(アメリカ)に敗れた。 文:武田薫