あけましておめでとうございます。 いよいよATPツアー2015が始まっていますね。 とにかく興奮、興奮だった昨シーズンから長かったような、短いような1ヶ月のインターバル。 我らが錦織圭が全豪オープンの一回戦に登場しました。 全豪オープンではメインスタジアムであるロッド・レーバーアリーナ、そして今年から3番手から格上げになったマーガレットコート、そしてハイセンスアリーナという三つのスタジアムがあります。 それ以外にも外にはいくつものテニスコートが複数あるといった具合です。 今日の錦織の試合は改修されキレイになったマーガレットコート(以下MCA)の第一試合での登場でした。 これは何気にすごいことで、去年までの錦織でしたら日本人の試合を同じコートに集めて行うことがほとんどでした。 ウィンブルドンなんかはまるで駐車場のような場所で、隣接するコートの声が響き渡るような場所でボレリと試合をしていたことが記憶に新しいですよね。 ですからこの待遇、セレナ・ウィリアムズやアンディ・マレーだって初戦はMCA、相手がアルマグロという強豪こともあって、その注目度の高さが窺えました。 一回戦の相手、ニコラス・アルマグロ。 ニュースでの報道では世界ランク6●位の~のような言い方をされていましたが、彼はずっとトップ10前後に居るような、怪我の影響でランキングが落ちているだけの、いわゆる「迷惑ノーシード」の筆頭のような選手。(デルポトロの欠場によりさらに顕著に) 去年も錦織が優勝したバルセロナのQFでナダルに勝った、爆発的なフォアハンド、さらに鋭い片手バックハンドという強力な武器を有しています。(あの勝利と引き換えに怪我をしたのかとも思いますが) 錦織にとっても13年の楽天オープンでの敗戦が記憶に新しいところでしょう。 2ブレークアップからまくられた1stセット、挽回した後のファイナルセットで身体がパンクしてしまい、火が消えるように敗れたファイナルセットは忘れることができません。 さらに錦織にとっては好成績を上げた次のグランドスラムであるという事、周囲からの期待・プレッシャーがこれまでと桁外れに大きくなったことも大きな変化と言えるでしょう。 去年の全豪で優勝したバブリンカとリーナは全仏で初戦敗退。 調整段階とは言え、先日のラオニッチやExガスケとの試合を見るとリターンの精度がよくありません。 これまで数多くの常識を覆し続けてきた錦織といえども、正直に言って今日の試合は危険な要素が数多く存在しているように私は思っていました。 1stセットの立ち上がり、珍しくサービスゲームからスタートした錦織でしたが、いきなりこれをブレークされてしまいます。 錦織も良いわけではありませんでしたが、それ以上にアルマグロの強打、そしてライジング気味に叩いてくるバックハンドが、見事なウィナーを量産してきます。 トップ5の名前にも怯むことなく、自分こそが最強だと言わんばかりの表情、プレースタイルは、錦織にとって非常に厄介なことだったでしょう。 錦織のサービスも悪くはありませんが、それ以上にアルマグロがミスを恐れず攻撃を仕掛けてきます。 サービスキープにも苦労しましたが、今日の錦織は我慢の展開、しかしそれが今日の試合の明暗を分けるようなポイントになったのではないでしょうか。 極力エラーを減らし、相手に素晴らしいウィナーを取られてもすぐに切り換える。 ウィナーも多いがエラーも多いバブリンカとの昨日の練習は、そうした所を見越してのものだったのでしょうか。 また、Exガスケ戦でも我慢のサービスキープが続きましたが、こうしたこともやはり本番に向けての貴重な財産にしていくところが、これが錦織の言うところの「いい準備」だったのかとも思います。 気分良くプレーしていたアルマグロのミスから出た僅かなほころびを付いてのブレークバック、そして5-4からのブレーク。 アルマグロからすれば何で落としたか分からないような1stセットだったと思います。 2ndセットに入ってもアルマグロはやはり積極的に攻撃を仕掛けてきます。 必要とあらばダブルファーストも選択し、これが決まる。 とにかくあの錦織が早いストロークからのウィナーをあれだけ取られるのはなかなかお目にかかれません。 ここでも先にブレークを許してしまいます。 それでも錦織は我慢を重ね、粘り、アルマグロを自分のペースに引きずり込もうと、辛抱強くチャンスを待ちます。 ブレークバック後は一進一退の展開となりましたが、10分以上掛かった長い長い4-3からの第8ゲームをブレークに成功、勝負は決まったかに思われました。 しかし、錦織のSFSとなった第9ゲームをアルマグロが執念のブレークバック。 ここにきてそれをそこに決めますかという驚嘆のウィナー、流石でした。 アルマグロに傾きかけた展開、しかし今日の錦織は大会を戦う上での一つのテーマであろう「我慢」が素晴らしかった。 タイブレークではサービスエースから始まる集中力を見せ、アルマグロにプレッシャーをかけていきます。 するとここで簡単なミスをアルマグロが2本続けて3-0、錦織はしっかりとキープし、5-0。 このあたりで今日の試合は勝負アリでした。 必要な時に、必要な分だけ集中力を高める、いわゆる「ギアを上げる」タイミングがしっかりと噛み合った、素晴らしい2ndタイブレークだったと思います。 1時間以上かけて積極的に戦った2ndセットを落とし、さすがのアルマグロもここで集中力が切れてしまいました。 3rdセットに入ると表情から威圧感が消え、ようやく簡単なミスを重ねるようになっていきます。 非常に難儀なミッションでしたが、錦織が辛抱強くせっせと蒔いた種が芽を吹きました。 アルマグロもこの調子であればすぐにランキングも戻して、タイトル争いする姿を近いうちに見ることができるでしょう。 本当に病み上がりとは思えない難敵でした。 そしてそんな相手にもストレート勝ち。 当然消耗もあるでしょうが、要所を締めて勝ちきることができた。 これはまさに錦織がトップ5プレーヤーとして成長した姿を体現している事に他なりません。 アーリーラウンドで上げきらず、難敵相手にも上手にいなして勝ちきる、こうした勝ち方ができるのはほんの一握りの選手だけでしょう。 要するに「強い相手に強い勝ち方をする」ということです。 それが世界のトップ5プレーヤーである日本人だということ、改めて驚くばかりです。 この危険極まりない初戦を乗り切った意味は大きいでしょう。 次戦はおそらく前回快勝したドディグ、3回戦は苦手にはしていないヒラルドかジョンソン。 当然やってみるまでは分かりませんが、ここまで勝ち進めば去年のポイントはカバーです。 前回覇者、そして最強王者との再戦に向け、良いスタートが切れたと言っていいでしょう。 お見事でした。 今日はこの後ヨルダン戦に現れるのでしょうか? 気持ちも身体もリフレッシュして、また明後日の試合を楽しみに待ちましょう。 おつかれさまでした。