-大会レポート- 第1日 先陣の伊藤竜馬は空回り、ナダルは会心の復帰
気温は22度で快晴。特有の海風もほとんどなく、絶好のコンディションで開幕した。日本勢は男子4人、女子2人がシングルス本戦出場を果たしたが、残念ながら、先陣を切った伊藤竜馬はストレート負けに終わった。
世界ランク34位のマルティン・クーリザン(スロバキア)は、左利きで粘り強さが売りのクレーコートプレーヤー。昨年の終盤からランキングを89位まで戻した伊藤にも十分に勝機はあった。第1セット、押され気味に進みながら先にチャンスをつかんだのは伊藤。第5ゲームに30-40から3本のブレークポイントをつかみながら、攻めきれなかった。伊藤の持ち味は威力のあるサーブからの突破力。サービスゲームでしきりに太陽の位置を気にして集中できない。リズムをつかめないまま、タイブレークを落としてしまった。
伊藤には、気持ちが乗らないと収拾がつかなくなる傾向がある。クーリザンは荒っぽいテニスでミスが目立ったのだが、付け入ることができず、転がるように第2セットを0-5から2-6で落として墓穴掘った。
「リターンがカギだと思っていたがいまひとつ鋭さに欠けた。バックの高いところを狙われ、そこを修正することまでは出来た。常に後手に回って振り回された」
試合開始は11時で、伊藤がコートに入ったのはクーリザンより15分近く遅れた。相手を控室で待つという行き違いだったと言う。実力接近の対戦、ましてグランドスラムの初日は特別な雰囲気。そうしたちょっとしたムードが影響することもある。錦織圭に次ぐ日本のNo2は、今年の目標を世界ランク50位内に置いている。それに相応しいショットを持っているだけに、ムードを超越した戦い方を期待したい。
ラファエル・ナダル(スペイン)が元気に戻ってきた。昨年のウィンブルドンで新鋭のニック・キリオス(オーストラリア)に敗れた後、右手首の故障で全米オープンを欠場。秋には盲腸炎の手術でツアーファイナルも欠場し、復帰した1月のドーハでは世界ランク127位に敗退……そんな不安を一掃する元気いっぱいのセンターコートだった。
ミカエル・ユーズニー(ロシア)はかつて世界8位まで登りつめ、油断できない。ナダルはいつものように慎重、細心にゲームに入り、相手の出方を伺いながら得意のショットを織り交ぜた。第1セットの第5ゲーム、相手のダブルフォルトに乗じ、打ち合いからフォアのパッシングショットを決めて最初のサービスブレーク。ここで勢いをつけると一気に攻勢に転じ、第9ゲームもブレークして先手を奪った。
ナダルの魅力は強烈なフォアハンドだ。ダウンザラインに、逆クロスに――大きく跳ねて伸びていく球道に、満場のスタンドから歓声が上がり、安堵の笑いが広がった。第2セットは連続12ポイントで、いきなり3-0まで持ち込み、気分も盛り上がったのだろう、お馴染の「バモス!」とガッツポーズが飛び出してストレート勝ちした。
ナイトセッションでは、第2シードのロジャー・フェデラー(スイス)も危なげなく発進するなど、男子は順当に発進したが、女子には波乱があった。好調だった第5シードのアナ・イバノビッチ(セルビア)がルーシー・ラデッカ(チェコ)に逆転負け、第9シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)、サビーネ・リシツキ(ドイツ)、さらに期待の若手ベリンダ・ベンチッチ(スイス)も1回戦で姿を消した。第2日の第1試合に、いよいよ錦織圭が登場する。
文:武田薫