今日12月29日、錦織圭が25歳の誕生日を迎えました。今日当ブログでは、錦織の誕生日に合わせてテニス選手における25歳という年齢を考えてみたいと思います。 Happy 25th Birthday to @keinishikori! More on Kei: http://t.co/dMkQtUUhBk #ATP #tennis pic.twitter.com/7B46gZCwC3— ATP World Tour (@ATPWorldTour) 2014, 12月 29  テニス選手の全盛期は一般に24~6歳と言われています。これはある程度はっきりした基準です。フェデラー(2005~06)も、ナダル(2010)も、ジョコビッチ(2011)もこの法則から外れることはできません(全員24歳が全盛期)。ヒューイットやロディックの頃までは20代前半でピークを迎えてその後落ちていく早熟派も多かったのですが、同じく早熟派と思われていたナダルの更なる強化以降、このタイプの選手は本当に少なくなりました。  では24歳にトップに立った彼らは何年間トップパフォーマンスを維持できるのでしょうか。フェデラーの09全仏~10全豪、ナダルの2013年を考えると「2度目の全盛期」は3年後、28歳と27歳で訪れており、その翌年はパフォーマンスが落ちています。現在27歳のジョコビッチは2014年末の現在に至るまで常に高いパフォーマンスをキープしています。簡略化して考えてしまうと「25歳になった錦織圭」に与えられた時間はこの先3年ないし4年ということになりますが・・・ちなみに過去の大選手、サンプラスがめっきり衰え始めたのは29歳のことでした。28歳の最後に制した00年ウィンブルドンを最後に2年以上ツアータイトルから遠ざかることになったのです。  もっと身近な例で見てみましょう。今シーズン25歳で戦った選手達はどうだったのでしょうか。デルポトロは負傷で離脱したものの、チリッチは25歳最後の大会となった全米を制して9月末に26歳となりました。グルビスもフェデラーを破って全仏ベスト4を達成した後トップ10入りも果たし、8月に26歳となっています。彼らは二人ともキャリアハイの成績をたたき出しています。この2人の例は25歳全盛期説の正しさを裏付けています。  一方でテニス選手の全盛期が徐々に後ろにずれつつあるのではということも昨年辺りから言われています。フェデラー(33歳)とフェレール(32歳)に代表される30代選手達の異常なまでの奮闘に加え、ナダル(28歳)、ジョコビッチとマレー(27歳)、そしてトップ10を連続4年以上守っているベルディヒ(29歳)らがどんどん加齢していくにもかかわらず彼らを脅かす選手が昨年まで全く出てこなかったという理由からです。これが単純に下の世代の不甲斐なさによるものなのか、本当にテニス選手の活躍年度が後ろにずれているのか、どちらによる現象なのかは歴史に判断してもらうしかありません。  昨年9月に25歳と「全盛期の年」を迎えたデルポトロは自ら勝負の年と位置づけて4強に挑んだものの、あと一歩及ばず跳ね返されています(過去記事参照)。来年の錦織はまさしく昨年のデルポトロと同じ立場に立たされることになります。4強への挑戦者筆頭として挑む1年間が始まるわけです。また錦織とちょうど1歳差のラオニッチも27日に24歳の誕生日を迎えています。来年はラオニッチにとってもまた勝負の1年間となります。  若い選手が活躍開始が遅くなり、一方で元気なベテランが多いのには、一説としてストローク戦中心の現在のテニス界におけるフィジカルの重要度が日々上がっていることにあると言われています。プレーの成熟と比較してフィジカルが身につくのは遅いのです。例え毎日マシンルームに篭ってトレーニングを行ったとしても、それでもです。一概に鍛えればよいというのではなくて、テニスには瞬発力持久力スピードパワー頑丈さ全てがバランスよく必要で、個人に合った筋肉をつけていくのにはかなりの時間がかかります。ナダルはブレイク後に一度ムキムキにして失敗し(よくネットでナダルの画像として貼られる筋骨隆々なものはほとんどこの時期のもの)、その後最適なバランスに鍛えなおして全盛期を迎えています。参考までに今年のジョコビッチのトレーニング光景を見てみましょう。無駄なものを一切削ぎ落としたこんな肉体は一朝一夕で作れるものではありません。 Working the core muscles earlier today. Training for tomorrow, and Monday, hopefully ;) pic.twitter.com/RzgZGOisVj— Novak Djokovic (@DjokerNole) 2014, 9月 5  一度完成したフィジカルは、近年のスポーツ科学の進歩により衰えを最小限に抑えることができます。そして衰えも長年試合をこなす中で身についた豊かな経験と戦術でカバーできます。そのようなバックボーンのない若手陣にとって、単純な身体能力とショットのセンスだけでゴリ押しすることは難しくなってしまいました。  フィジカル偏重なこの時期においてこそ、錦織にはぜひ天下を取ってほしいものです。もちろん錦織だってフィジカルを身につけていないわけではありません。2年前の全豪では準々決勝で既に精魂尽き果てていた錦織が今年の全米では接戦続きでも力尽きることなく決勝まで進んだのですから。  それでも欧米のトップ選手と錦織の体格では歴然とした差があるのも事実。TOP100の平均身長は187.3cmまで伸びてきており、170cm台の選手は錦織とフェレールを含みわずか10人。フェレールのいなかった最終戦出場者に限るとその平均は190.8cmまで上がったのだそうです。デルポトロ(202cm)やチリッチ(198cm)といった昔ならまともに動けなかっただろう大型選手がその身体能力に頼らずしっかり鍛えて、小柄な選手に負けずにコートを走り回りストロークを打ち込むのですからたまったものではありません。そんな時代に178cmの錦織が天下を取るようなことになれば、この上なく素晴らしいことではありませんか?