オフシリーズ・閑話球題 ⑮テニスの「数字」その1 ランキングポイントのまやかし
こんにちは。
今日から本気出したいと思います。いやいつだってブログを書くときは本気で書いていますけど。
今回のオフシリーズで一番やりたかった内容を今日からやっていきます。
テニスにデータ的な数字はなくてもいい?と言われればとんでもないと答えるでしょう。
そもそも近代スポーツではどんな競技だってデータと隣り合わせです。
最たるものはアメリカンフットボールでしょう。パス、ランのヤード数から各ダウンごとにどの攻撃が多いか、誰を使うのかなどそのデータは驚くほど多いです。
野球にしたって配球から打率、最近はOPSやWHIPなどメジャー流の指標まで登場し、これらによって選手が評価されます。
サッカーでも支配率、枠内シュート率、誰がどの位置でプレーしたかの分布などデータは欠かせません。
今日からは知っておくと便利なテニスの数字、データについて取り扱っていこうと思います。
初回である今日はランキングの話です。
ATPランキングのみが載っている記事に対してよく見るコメントとして「ジョコビッチとフェデラーが抜けていて、とんでもない」「1位はまだ遠い」などの意見がよく見られます。
しかし私は「半分は合っているけど、半分は間違っている」と思っています。
それはATPランキングシステムのある種のトリックのようなものに起因しています。
まずは今週段階のトップ30のポイントです。こちらです。
1 ジョコビッチ 11510
2 フェデラー 9775
3 ナダル 6835
4 バブリンカ 5360
5 錦織圭 5025
6 マレー 4675
7 ベルディヒ 4665
8 ラオニッチ 4440
9 チリッチ 4150
10 フェレール 4045
11 ディミトロフ 3645
12 ツォンガ 2740
13 ガルビス 2455
14 ロペス 2130
15 バウティスタ=アグト 2110
16 アンダーソン 2080
17 ロブレド 2015
18 イズナー 1890
19 モンフィス 1825
20 フォニーニ 1790
21 シモン 1730
22 ゴフィン 1599
23 ドルコポロフ 1455
24 コールシュライバー 1415
25 ベネトー 1365
26 ガスケ 1350
27 カルロビッチ 1320
28 マイヤー 1299
29 シャルディー 1240
30 ロソル 1210
確かにこの数字を見ると絶対量としての1位2位は頭抜けています。
しかしもう皆さんは知っているはずです、ATPポイントはすべての1勝に対して等価ではないということです。
念のため以前紹介したポイント配分表をもう一度。
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優勝 準優勝 4強 8強 16強
GS 2000 1200 720 360 180
MS 1000 600 360 180 90
500 500 300 180 90 45
250 250 150 90 45 20
GSは出場で10p、初戦勝つと45p、次に勝つ(32強)と90pとなります。一回勝つと倍になっていく方式というイメージですね。予選通過の場合25pが別ボーナスで入ります。
MSは96ドローの場合出場で10p、初戦勝つと25p、次勝つと32強で45p、以下上の表に続きます。
48/56ドローの場合出場で10p、初戦勝つと45p、以下上の表に続きます。
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さてここでグランドスラムのポイントに注目してみましょう。(実はマスターズなどもほぼ同様)
2回戦以降のポイントは45→90→180→360→720と、ここまですべて2倍されています。
さらに4強→準優勝は1200pと5/3倍、準優勝→優勝は2000pと5/3倍、つまり2回戦からはほぼすべて2倍ということです。
これを言い換えるとこういうことになります。
グランドスラム優勝2000pが1人、その半分の準優勝が1人、その半分の4強が2人、その半分の8強が4人…となり、つまりポイントが半分になるにしたがってそのポイントを得る人がちょうど2倍になっていくのです。
これをふまえて次のグラフを見てみましょう。すると驚きの関係がわかります。
上のグラフはいわゆる一般的なグラフで、1位から100位までのポイントを普通に並べてみました。
こうすると確かに上位が抜けていますよね。
下のグラフは「両対数グラフ」と呼ばれるもので、1メモリ右/上にいくと数字が2倍になるように設定しています。(理系の方であればすぐわかりますよね、文系の方もこの説明で十分でしょう)
さっき言ったようにポイントが半分(1目盛り下)になると人(ランキング)が2倍に(1目盛り右)になります。
若干傾きが緩いですが、現行のランキングシステムになってからは概ねこのような相関関係を取ることがわかります。
ちなみに10位付近が浮いているのはその辺の人たちがファイナル争いで年末に頑張ったからです。
1位付近の傾きが緩やかになるのは仕様です。
さっきの仮定では「1位が1年間全勝」という無謀な仮定を使っていますが、現実はそんなことはありえませんので傾きが緩やかに(=想定されるポイントよりも低く)なります。
もちろんこの仮定はすごいいろんな議論を取っ払った雑な説明ですが、時にはこのように適当に見せかけて真理を突いている議論もあると思います、これはそういう類なものなので細かいツッコミはやめてください、結果を重視しましょう。
おいtwosetdownこれは都合のいいデータを示しただけでは?と言われそうですがとんでもありません、むしろ2014年は取り除きたいデータです、次のグラフは2013年(上)と2012年(下)の年末ランキングをもとにしたグラフです。
ご覧の通りより直線らしいグラフになっています。
2013年はナダルとジョコビッチで主要14大会中12大会を制し、2012年は4強+フェレールがポイントを分け合う(ナダル怪我のためその分をフェレールがもらった形で)構図と、上位はその時のトレンドによって変動していますが、中位以下はほぼ同じ感じです。
つまり、誤差が出やすい上位はほっておくとしても、ランキングポイントは常にこのような形で分配されるということがわかります。
さて錦織のポイントは5000を超えています、感覚的には10000pあれば1位というイメージがあります。2013年のような2強体制では話は違いますが、それはイレギュラーなので除くとすると、1勝すればポイントは倍になっていくわけですから、錦織圭はすべての大会であと1勝を伸ばせるような活躍をすれば、2015年は1位になれる!!!という強引な結論をたたき出すことができます。
以上が1位との差が圧倒的だという意見に、「半分は賛成できない」理由です。
しかし現実的にはこれはあまりにも議論が雑すぎます。次回は10000p取るためにはどんな勝ち方をすればいいのか?とトップ選手の勝ち負けについて議論していきます。