前半の続きとなります。 【”ナンバースリー”が世界1位へ】  迎えたウィンブルドン、フェデラーとジョコビッチは再び同じブロックに入ります。ジョコビッチは決勝に進めばナダルの結果にかかわらず世界1位奪取。またしてもフェデラーが壁になるのか、ジョコビッチが突破するのかと大きな注目が集まります。だが準々決勝でフェデラーは自身初めて2セットアップから敗退するという大波乱を起こしてしまいます。ジョコビッチの準決勝はツォンガとの対戦となりこれを4セットで下して決勝へ。ナダルをもってしても今のジョコビッチは止められる相手ではありませんでした。5回のブレイクを奪ったジョコビッチはわずか2時間28分でナダルを下しウィンブルドン初優勝。大会後とうとう世界1位の座に就きました。3位になったのが2007年7月だったジョコビッチ、4年かけてようやく二強の壁を越えたことになります。  モントリオールでもジョコビッチの勢いは止まらず今年9大会目の優勝。さらにシンシナティでも決勝に進みましたがマレーとの一戦を右肩痛で途中棄権し2011年2敗目。今年初めてジョコビッチが見せた脆さでした、さすがに幾多の激戦を戦い抜いたジョコビッチの身に負担が蓄積され始めていました。だが心配をよそに全米ではタイブレークで1セット失ったのみで準決勝へ。ここで再びフェデラーと激突したのです。試合は全仏を越える死闘となり、全仏と全く同じような展開で2セット奪ったフェデラーに対してジョコビッチが2セット奪い返して最終セットへ。迎えた最終セットはフェデラーが第8ゲームでブレイクを奪い5-3,40-15。またしてもフェデラーがジョコビッチを食い止めるのか?  ここで有名なあのプレーが飛び出すのです。このリターンエースで一気に流れが変わりました。ジョコビッチは2セットダウンからの大逆転勝利で決勝に進むとナダルを再び下して対ナダル戦6連勝を飾るとともに今年3つ目のGSを獲得したのでした。 【ナダルとマレー】  この年はナダルにとっても素晴らしい年のはずでした。ナダルは全仏とモンテカルロを制しさらに2つのGSと4つのMSで決勝に進んだのです。だがジョコビッチを倒すことだけが叶わず、それがこの年のナダルの戦績に傷を付けたのでした。ジョコビッチはフェデラーと違い高い打点を全く苦にしないばかりかむしろチャンスボールとしてしまいます。ジョコビッチの得意技、ボールの上からラケットを被せるような強打が対ナダル戦で何度となく炸裂します。いくら守備に長けどんなボールでも拾うナダルとはいえジョコビッチの攻撃力の前には無力でした。ナダルもジョコビッチ戦では守勢に回らずにより攻撃的に行くことを考え始めます。これが来年の2強対決につながっていきます。  マレーにとっても2011年は悪くない年でした。全てのGSでベスト4に入り、そのうち全豪では準優勝。さらにシンシナティMSでジョコビッチを破りさらに上海MSも制してMS2勝を挙げました。最終戦前にはフェデラーを抜いて一瞬3位にも上がりました。マレーにとって鬼門となったのはナダルでした。全仏、ウィンブルドン、全米と3大会連続で阻まれてしまったのです。だが東京では第3セット6-0という圧巻の攻撃で雪辱を果たしました。ジョコビッチの裏でマレーも着実に実力をつけていました。 【シーズン終盤戦】  ウィンブルドンでツォンガに、全米でジョコビッチに大逆転負けを喫したフェデラー。この年獲得したタイトルは250のドーハ1つだけと他の3強に押されっぱなしのままシーズンは10月に入ってしまいます。だが地元バーゼルで錦織を破り優勝したことでフェデラーは立ち直ります。続くパリMSも制するとツアーファイナルズで躍動、他のBIG4が崩れる中一人安定した戦いで6度目の優勝を達成しました。  一方他の3人はいずれも激しいシーズンの疲れを引きずったままの最終盤戦となりました。元来インドアハードが不得意なナダルに加え、ジョコビッチはシンシナティで痛めた右肩をデビスカップ準決勝で悪化させてしまいシーズン終盤は敗退を繰り返しました。マレーもアジアシーズンで3週連続優勝を達成したもののその反動で最後力尽きてしまいました。この結果他の選手達にも多いにチャンスが有る中で迎えたパリMSと続く最終戦でしたが、鬼の居ぬ間にタイトルを全てかっさらっていったのはフェデラーでした。結果2011年はMS以上のビッグタイトルを4強が全て独占することになりました。そして2012年全豪、テニス界は史上最高の瞬間を迎えることになるのです。