オフシリーズ・閑話球題 ⑤ATPツアーの紹介その3(7月~全米、その他の大会)
こんにちは。
2日続けて書くのが意外とエネルギーがいることがわかりました。
試合がないからだと思います。試合があったらいくらでも書くことはあるんですが…
さて今日は7月~全米OPと、デビスカップそして日本の大会について書いていきましょう。
まずは「7月武者修行シリーズ」です。
7月武者修行シリーズは2月の武者修行シリーズ同様にさまざまなサーフェス、会場で行われます。
ウィンブルドンで一旦連戦が終わるので、このシリーズはかなりの上位選手が(2月シリーズ以上に)休みます。
昨年実績ですがいわゆるビッグ4(フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレー)はウィンブルドン~カナダマスターズまで全休、ほかの現トップ10についても、フェレールが参戦した以外は武者修行シリーズのほうは参戦していません。
ちなみに武者修行シリーズの後半戦から並行して「全米オープンシリーズ」が始まります。
この全米オープンシリーズのワシントンには錦織、ラオニッチなど多くの選手が出ました。
先に武者修行シリーズのほうを片付けましょう。
week28(7/13~19)
デ杯準々決勝(後述、今は後回しにします)
テニスの殿堂選手権(ニューポート、芝、ATP250、昨年優勝…ヒューイット)
ニューポートというアメリカの街には大会名どうり「テニスの殿堂」があります。
ここにはテニスに貢献した、歴史を作ったさまざまなものが置かれているらしいので一度行ってみたいです。
毎年この大会中に表彰式が行われ、今年は錦織の所属するフロリダのアカデミーの指導者、ニック・ボロデリーらが受賞しました。
大会自体も歴史あるもののため、ウィンブルドンが終わった後の芝大会でありながら芝が得意な選手は参加してきます。
今年はウィンブルドン制覇の経験があるヒューイットがキャリア30勝目を挙げました。
week29(7/20~26)
スキースター・スウェディッシュオープン(バスタッド、クレー、ATP250、昨年優勝…クエバス)
テニス大国スウェーデンは昔の話になってしまいました。
なんといってもボルグを輩出し、その後エドバーグとビランデルという名選手が同国同士で競い合い、デ杯優勝も何度も経験しているスウェーデンですが、最近は大きな活躍をする選手がいません。
大会はスウェーデン勢のこの実績が示すように非常に歴史があり、現在11年連続ATP選手が選ぶ「最も好きなトーナメント」のATP250部門に選ばれています。
今年はクエバスが復活優勝でした。
クラロ・オープン・コロンビア(ボゴタ、ハード、ATP250、昨年優勝…トミッチ)
ATPの南米拡大事業によって新設されたコロンビアにとって悲願だった大会。
2013年から始まった大会ですが、今年は近くのドミニカ出身、ブルゴスがガスケを倒して盛り上がりました。
大会のほうはトミッチが久しぶりの優勝で若手争いに入ってきました。
クロアチア・オープン(ウマグ、クレー、ATP250、昨年優勝…クエバス)
クロアチアでもクレーの大会が行われます。
今年はクエバスが第1、第2シードを倒し、3週間で2度目の優勝。
ツアーカレンダーが動いたのでバスタッドと同週開催になりましたが、クエバスはどちらを選択するのでしょうか。
week30(7/27~8/2)
ベット・アット・ホームオープン(ハンブルグ、クレー、ATP500、昨年優勝…メイヤー)
上海が新設されるまでマスターズ・シリーズの一角を担っていた大会。09年からATP500に降格しています。
時期もあり、500出場義務をこなすための裏街道としての位置づけになっています。ここに参加するとハードコートの調整が遅れるためです。
スポンサーのベット・アット・ホームは賭けサイトの大手で、この時期の大会に多く出資しています。
今年はL.メイヤーが決勝でフェレールに大逆転勝ち。うれしいツアー初優勝を挙げました。
クレジット・アグリコルオープン(グスタード、クレー、ATP250、昨年優勝…アンドゥハル)
スイスの山の中で行われるアットホームな大会です。人口、面積的に小国ながらツアーを2大会も開けているのは、他ならぬフェデラーのおかげでしょう。
2013年は不振だったフェデラーが急遽出場しました。
今年は穴場の大会となりました。アンドゥハルが優勝、復活した元トップ10プレイヤーモナコの準優勝も印象的でした。
week31(8/3~9)
オーストリア・オープン(キッツビュール、クレー、ATP250、昨年優勝…ゴフィン)
翌週にカナダマスターズ(ハード)を控えた大会で、クレーコーターとマスターズに出ない選手が残って戦います。
今年はチャレンジャーから4週連続優勝という破竹の勢いそのままにゴフィンが優勝し、後半戦の大活躍が始まりました。
これだけの週休めるというのはトップ選手からすれば魅力ですよね。前半戦にたまった疲れを回復し、長いラストスパートに向け気を引き締める時期です。
そしてweek30から「全米オープンシリーズ」が開幕します。
これは全米オープンが公式的に認めている一連の大会群で、試合球やサーフェスなどをできる限り同じにして調整しやすいようにしています。ハードコート、速めのコートが多いのが特徴です。
そしてこれらの前哨戦の大会の成績をATPポイントとは違う方法で合算して、上位3名には全米オープンの賞金額アップというルールがつけられています。
このシリーズを得意としているのは暑さにも負けない、そして省エネで切り抜けられるビッグサーバーが比較的有利で、北米勢の活躍が目立つ時期です。
week30
BB&Tアトランタオープン(アトランタ、ハード、ATP250、昨年優勝…イズナー)
アトランタから全米オープンシリーズの開幕です。
アトランタでは地元のイズナーが毎年出場、活躍しています。
今年も大会を制し、夏男の力を見せつけています。
week31
シティ・オープン(ワシントン、ハード、ATP500、昨年優勝…ラオニッチ)
ワシントンで行われるATP500は2週間続くマスターズの前哨戦です。
しかし続くマスターズとの3週連続を避けるためにトップ5は回避しがちな大会で、年によっては穴場になる場合もあります。
今年はベルディヒ、ラオニッチ、錦織が出場しましたが、決勝はポスピシルとラオニッチの史上初の決勝カナダ勢対決に。ここは上位のラオニッチに軍配。得意のシリーズで弾みをつけました。
week32(8/10~16)
ロジャーズ・カップ(モントリオール/トロント、ハード、マスターズ1000、昨年優勝…ツォンガ、2013年優勝…ナダル)
北米マスターズの1戦目はカナダで行われます。
女子との共催で、隔年ごとに開催地を変えます。男子は奇数年がモントリオール、偶数年がトロントです。
今年のトロント開催ではマレー、ジョコビッチ、フェデラーを破ったツォンガが破竹の勢いで優勝。今シーズンの波乱を象徴する結果になりました。
2013年(前回のモントリオール開催)は、2012年終盤の足のけが以来初めてのハードコートでの大会となったナダルが優勝し、全米OPまで3連勝を飾りました。
この大会はなんといっても地元のヒーロー、ラオニッチでしょう。今年は8強、2013年は準優勝でした。地元の大声援に来年も応えてくれるでしょう。
week33(8/17~23)
ウェスタン&サザンオープン(シンシナティ、ハード、マスターズ1000、昨年優勝…フェデラー)
続く2戦目はシンシナティ。アメリカ勢の活躍が目立つ大会です。2013年にはイズナーが決勝に進んでいます。
今年は30歳越え同士のフェデラーとフェレールの決勝。しかし対戦成績で圧倒するフェデラーが何とか振り切って優勝。後半戦の猛チャージが始まります。
week34(8/24~30)
ウィンストン=セーラムオープン(ウィンストン=セーラム、ハード、ATP250、昨年優勝…ロソル)
ほとんどの上位選手が全米の調整に充てるため、また下位選手は予選の週にあたるので50位付近の選手がこぞって出る大会です。全米と環境を完全に同じにすることで、試合をしながら調整できるのが魅力です。
今年はロソルが優勝しました。
week35、36(8/31~9/13)
全米オープン(ニューヨーク、ハード、グランドスラム、昨年優勝…チリッチ)
グランドスラム最終戦はニューヨークの街のど真ん中、フラッシングメドウズで行われます。
スポーツのショー要素が強いアメリカの国柄を反映して、応援が熱狂的で時にはうるさくなるくらいです。
コートは高速ハードで、全豪よりも速いです。サーブを中心とし、パワーヒッターが勝ちやすい傾向にあります。これはチリッチやデルポトロの例をみると明らかでしょう。
また初グランドスラム制覇の大会になりやすいことでも知られており、マレー、サンプラス、デルポトロらは全米が最初のグランドスラムです。
センターコートはアーサー・アッシュスタジアム。テニスのレジェンドアーサー・アッシュの名前を模しています。
次の格のコートはルイ・アームストロングスタジアム。あのジャズミュージシャン、ルイ・アームストロングの名前です。ニューヨークでの活躍にこのフラッシングメドウズの地と深い関わりがあったからだそうです。詳しくはこちらをどうぞ。
アメリカ勢の優勝は03年のロディック以来ないです。最近はトップ10プレイヤーもいなくなり、サンプラスやアガシといった名選手を輩出した大国としてはさみしいばかりです…
week37(9/14~9/20)
デ杯準決勝・入れ替え戦
一応全米オープンシリーズはここまでですが、翌週のデ杯も入れておきます。
デビスカップは「テニスのワールドカップ」と呼ばれる国別対抗戦です。
決勝の時にも少し話しましたのでかぶる内容があります。ご了承ください。
まずデビスカップは主に4つの日程(これをデビスカップでは「タイ」と呼びます)からなります。
1回戦(week9)
準々決勝(week28)
準決勝・入れ替え戦(week37)
決勝(week47?)
この4週間はATPツアーがほぼ休みになっています。厳密にはATPと相談して?日程をうまく決めています。会場確保の問題などあるので、4週連続開催なんて言うのは不可能で、1年間通してゆっくり行っていきます。
デビスカップはもちろんデビスカップという世界一のテニス国家という称号をかけて戦いますが、何せ長期間開くことができないので200近い国を選別するためにグループ制になっています。
一番上のグループはワールドグループで、その下はアジア・オセアニア、ヨーロッパ・アフリカ、北米・南米の3つの地域ごとに分けてゾーン1、ゾーン2…という風に分かれていて、上位と下位がそれぞれ自動的に入れ替えします。
しかしワールドグループとゾーン1だけは入れ替え戦が存在します。
ゾーン1から勝ち上がってきた8か国とワールドグループ1回戦敗退の8か国を合わせた16か国が入れ替え戦を行います(注・振り分けはチームランク順に決めるので、ワールドグループ1回戦敗退同士の国が当たる場合もあります)。
こうして毎年グループを入れ替えながら毎年より上のグループへ、そしてワールドグループの国は頂点を目指します。
対戦方法です。
3日制、すべて5セットマッチで最終セットのみタイブレークがありません(いわゆる、キープし続ける限り終わらないというやつです)。全米以外のグランドスラムと同じルールです。
4人で1チームを組みます。
初日はその国のシングルスに出場する選手のうち、チーム内の世界ランキングの1番手と相手の2番手、2番手と相手の1番手がシングルスで対戦します。
2日目はダブルスです。シングルスに出たかどうかは関係なく、別にシングルスに出た二人同士を組ませてもいいし、一人だけ組み替えてもいいしなんでもOKです。
3日目はシングルスで、第4試合は1番手同士、第5試合は2番手同士が対戦します。
先に3勝したほうが勝利で、次のラウンドに進みます。
2014年はスイスが悲願の初優勝を達成しました。
デビスカップは一人の力だけで勝ち上がるのはほぼ不可能です。
シングルスの強い選手がいても2勝しかできず、ダブルスはまあ普通は力が半減しますから、国としての総合力が問われる戦いになっています。
ただ逆に、2人いればほぼ無双できるルールなのは間違いないですね。ここ数年の優勝国の見てもスイスのフェデラー/バブリンカ、チェコのベルディヒ/ステパネクといった、シングルスが強くダブルスもこなせる2人がいれば強いのは事実です。
日本チームとしては、錦織の2勝プラスどこで1勝するかだと思います。
今年の1回戦のカナダ戦のように錦織の強引なダブルス投入は時に効果的ですが、しかしそうなると5セットマッチの3連投になるのであまり得策とは言えません。
早くダニエル、西岡といったナンバー2の育成に力を注いでほしいですね。極論入れ替え戦が錦織抜きでも勝てるようなレベルになれれば最高ですね。
最後に日本の大会について紹介です。
現トップ10プレイヤーを輩出しながら日本開催のATPツアーが1つしかないというのは非常に残念です。
たとえばカナダはラオニッチが出る前からマスターズを開いてますし、そもそもアジアテニス界において中国にキャパシティで後れを取っているのは残念であると言わざるを得ません。
私的にはぼちぼち楽天OPのマスターズ昇格や、有明でなくとも五輪に向けてツアーファイナルズの開催、それから深玔/クアラルンプールの週に日本開催のATP250の開催、この辺りを目指してほしいです。
特に250の開催(願わくば非首都圏)が最優先事項だと思います。
世界的に見てもATPツアーを2つ開催する国はうなづける何かがある国です。このグレードに持って行ってほしいですね。
ではチャレンジャー以下の日本開催の大会は何があるのか?これを紹介しましょう。
チャレンジャー
・京都チャレンジャー(3月、カーペット)
京都にあるチャレンジャー大会で、現在西日本で開催されている唯一のチャレンジャー大会です。
今年は時間があったので、実は初観戦に行ってきました。
私が見に行ったときはあのスイスデ杯優勝メンバー、キウディネリが試合してました。それから添田、守屋、杉田あたりも見れました。ちなみに500円で。ほんと安いです。
チャレンジャーレベルだと結構お値段も安く(楽天OPは仕方ないですけど高いですからね)、それでもトップ100付近の選手が出てくるので見応えは十分です。
一応位置づけとしてはインディアンウェルズマスターズの裏街道的な位置づけになっています。
・横浜(慶応)チャレンジャー(11月、ハード)
だいたいパリ~ツアーファイナルズのあたりで行われます。しかしこの時期は全豪の本選イン/予選インをかけて熾烈な争いが続いている時期です。海外からも多くの選手が来てくれます。
会場は慶応チャレンジャーの名でわかりますが、慶応大学日吉キャンパスです。首都圏の方は行きやすいのではないでしょうか。現役の慶応生もワイルドカードで出場します。
・豊田チャレンジャー(11月、カーペット)
横浜チャレンジャーの翌週に豊田でチャレンジャーが行われます。
日本勢はこの2大会に照準を絞って(加えて全日本選手権も)しのぎを削ります。
今年は添田、伊藤が活躍し、それぞれこの大会の成績で全豪本選インを確定させました!3人本選ということでこちらも期待です。
フューチャーズ
今年は7大会行われました。そこまで詳しくないので割愛します。詳細はITF(国際テニス連盟)のホームページなどを見られるといいと思います。
説明できないので小ネタを一つ。このフューチャーズシリーズには、08年の柏フューチャーズにあのラオニッチが来ていたのです!!!
しかも当時は無名選手で初戦敗退。移動も自分でバスで来たようで、当時のことを未だに覚えているらしいです。この時以来選択できる大会では基本的に日本を選んでくれている親日家のラオニッチ。楽天OPは毎年準優勝でなんかごめんなさい…
あれ、毎日どんどん記事が長くなってきてる…
次回はアジアシリーズと欧州インドアシリーズ、そしてファイナルで、トップ選手のスケジューリングを吟味していきましょう。それでは。