オフシリーズ・閑話球題 ③ATPツアーの紹介その1(1~3月)
こんばんは。
夕方更新の悪い癖がつきつつあります。
頑張ったら朝に更新できないこともないのですが、だらだらしちゃってよくないです。私用の消化もあるので。
さて今日からは1シーズンのATP全大会の紹介です。
私はよく言うんですがテニスは1シーズン見ないとその本質が見えないと思っています。
1シーズンかかる理由の1つは
①単純にテニスの見方が分からないから
よく観戦初心者の方が「単なるボールの打ち合いじゃないか」と言うことがありますがそれは誤りです。
よく注意してボールの軌道やスピードを見ると1球ごとにいろんなことが考えられているのが分かります。
しかしそれを今観戦を始めたような人に言ってもあまり意味はありません。それは様々なラリーの形を理解してから「この選手が今嫌なボールはこれ」という判断ができるようになるので仕方のないことです。どちらのサイドも悪い部分はありません。
②につながりますがこういうのがサーフェスや気象条件によっても変わってくるので、明日いきなり肥えた目になるというのは難しいと思います。私も最初は全然意味が分かってなかったなあと後になって思います。
②ツアーは1シーズンだから
簡単な話です。もし5月しかテニスを見なかったらきっとテニスはクレーコート主流だと思ってしまうでしょう。そういうことです。
1年間の間に世界各地を飛び回って、気温とサーフェスが目まぐるしく変わる中でプレーをしていく。季節ごとの大会の特徴もある。
こういったことはもちろん今日から説明していきますが、普通は見てそれを感じ取らない限り決してわからないことです。
やはりサーフェスによってもプレーは変わってきますし、1年という時間が必要です。あとそうやって1年間必死に見るとファイナルの重みが分かってきます。
多くの新参の方は「へえファイナルがあるんだ」と先月(あるいは早くても全米後)突然知って見始めたと思いますが、1月のあの全豪ナダル戦から積算して、やっとパリで決めた大舞台と思ってファイナルを見ると、やはりその重みが違ってきます。フェレール戦で胃が痛くなるわけですよ(笑)
というわけで今回からは全4回で年間の大会を紹介していきます。
2回前にちょこっと触れましたが、1~2か月程度で「シリーズ」とでも呼ぶべき一貫した大会の特徴みたいなものがあります。
このリズムをつかんでいくことがツアー観戦の心得です。毎週力を入れすぎると時差もあってすぐダウンします(要するにマドリードのころの私です)。
せっかくですので前回使った「week○○」で大会を紹介していきましょう(もちろんこんな表記はATP公式ではやってません、あくまで当ブログ内での話です)
「全豪オープンシリーズ」
全豪オープンシリーズはweek1~week4までの1か月間です。
1月と寒い時期ですが、開催場所を南半球か赤道に近くすることで気候を温暖にしています。
温暖というよりは暑すぎるといったほうがいいでしょうか。40度近い気温での大会もあります。
会場はアウトドアが多く、ハードコートです。最後に行われる全豪オープンに向けての試合となります。
全豪本番以外は250のグレードしかなく、調整目的で出るといった感じです。
week1(1/5~11)
ブリスベン国際(ブリスベン、ハード、ATP250、昨年優勝…ヒューイット)
ゴールドコーストに近いオーストラリア第3の都市でシーズン開幕です。
今年はヒューイットが準決勝で錦織、決勝でフェデラーを破って注目が集まった大会。
来シーズンは復帰のデルポトロやフェデラー、錦織、チリッチらの出場も決まっていて、来シーズンで最も豪華な250の大会になりそうです。
カタール・エクソンモービルオープン(ドーハ、ハード、ATP250、昨年優勝…ナダル)
ドーハで行われる大会はこのシリーズでは全豪開催地から最も遠い場所ですが、ホスピタリティがいいため毎年激戦になる大会。
今年は決勝でモンフィスを破ったナダルが2013年の年間1位の勢いそのままで優勝。全豪優勝候補に名乗りを上げました。
エアセル・チェンナイオープン(チェンナイ、ハード、ATP250、昨年優勝…バブリンカ)
インドで行われる唯一のATPツアー。ダブルスではインドはボパンナやブパシなどを輩出してますが、最近シングルスではトップ100に定着する選手が出てきません。
添田豪が2012年に4強入りしています。今年はバブリンカが第1シードの貫録を見せて優勝。のちの全豪優勝への序章となりました。
week2(1/12~18)
アピア国際(シドニー、ハード、ATP250、昨年優勝…デルポトロ)
2週目の出場は翌週に全豪を控えるため、若干選手層が薄くなりますがそこを狙って優勝しようという上位選手もいます。
今年は地元のトミッチが決勝に進出、前週のヒューイットに続きオーストラリアが盛り上がりました。
ハイネケン・オープン(オークランド、ハード、ATP250、昨年優勝…イズナー)
ハイネケンはあのビールでおなじみのハイネケンです。全米オープンでは2014年ハイライト映像のスポンサーでもあり、テニスにたくさん広告を出している大企業の一つです。
今年はアジア人として台湾のルーが決勝に進出。イズナーを追い詰めますがあと一歩届かず。ビッグサーバーのイズナーがタイブレークを2本制して優勝しました。
week3、4(1/19~2/1)
全豪オープン(メルボルン、ハード、グランドスラム、昨年優勝…バブリンカ)
グランドスラム1戦目。
青いコートが特徴的です。全豪オープンシリーズは青いコートが多いです。
とにかく暑いことで知られ、シーズンに入ったばかりの選手を灼熱地獄が襲います。
今年はジョコビッチがコート上に卵を割ったら目玉焼きができたという写真が話題になったほどです。
来年は暑さ対策の中断ルール「ヒートポリシー」がより厳格に取り入れられるようなので一安心です。
あとは調整不足による波乱もあります。ここを勝ち抜くのは本当にいいオフシーズンと調整ができた選手です。
ジョコビッチが2011年以降3連覇して相性のいい大会です。2014年にバブリンカに敗れるまで25連勝でした。
錦織圭にとっては初のグランドスラム8強入りを2012年に達成した縁起のいい大会です。
覚醒が続く錦織が全米に続いて…というのは決して夢の話ではないでしょう。
メインのセンターコートはロッド・レーバー・アリーナという名前でオーストラリアの男子テニスの英雄、男子テニス史上まだ一度だけの年間グランドスラム完全制覇を成し遂げたロッド・レーバーの名前を冠しています。
次の格のコートはマーガレット・コート・アリーナ。オーストラリア女子テニスのレジェンド、マーガレット・コートにちなんでいます。
全豪オープンが終わると一休み。次は「2月武者修行シリーズ」です。
このシリーズはおもに開催都市から3つのルートに分かれ、前後に行われることが多いデ杯と得意サーフェスに応じて選手が散り、普通は一つのルートをほぼ同じ選手たちの顔ぶれで戦っていきます。たとえば後で紹介する南米ルートは本当に顔ぶれが一緒です。びっくりするくらい一緒です。
なぜ武者修行シリーズと名付けているかというと(注・全豪オープンシリーズは公式的に言われていますが、武者修行シリーズは私が勝手に名づけたものです)、この時期は3月のインディアンウェルズまで2015年シーズンだと実に5週間もグランドスラム、マスターズ格の試合が行われません(5週目はデ杯のため結構な選手が試合に出る)。
というわけでこの時期のトップ選手の出場は一部のATP500を除いて少ないのが特徴的で、軽いけががあったとはいえ全豪優勝のバブリンカはデ杯1Rを戦ったあと全休しています。
しかし逆に言えばこの時期はポイントを稼ぎやすいチャンス。一部の上位選手(特にフェレール)や中位の選手はこぞって出場するのが特徴です。
このシリーズはweek別ではなくルート別に紹介していきます。
ユーラシアルート
week5(2/2~8)
ザグレブ・インドア(ザグレブ、インドアハード、ATP250、昨年優勝…チリッチ)
クロアチアで行われる大会。チリッチやドディグなどクロアチア勢が活躍しています。
今年はチリッチがイワニセビッチをコーチに迎えて優勝し、今シーズン、特にこの2月シリーズの快進撃に弾みをつけました。
チリッチはインドアハードにめっぽう強い選手で相性のいい大会です。
南フランスオープン(モンペリエ、インドアハード、ATP250、昨年優勝…モンフィス)
風光明媚な南フランスで行われるインドアハードの大会。参加選手の半分がフランス人選手でした。
今年はガスケとの地元対決を制したモンフィスが優勝しました。
week6(2/9~15)
ABNアムロ・国際テニストーナメント(ロッテルダム、インドアハード、ATP500、昨年優勝…ベルディヒ)
シーズン最初のATP500。昨シーズンは多くのトップ選手が出場。例年層が厚い大会です。
今年は全豪4強のベルディヒが優勝。シーズン前半戦の好調を印象付ける結果でした。
week7(2/16~22)
オープン13(マルセイユ、インドアハード、ATP250、昨年優勝…ガルビス)
フランスで行われる大会は多いですが、その1つ。多くのフランス人選手が出場します(昨年は28ドローで9人)。
大会はガルビスが優勝しました。
week8(2/23~3/1)
ドバイ・デューティーフリーテニス選手権(ドバイ、ハード、ATP500、昨年優勝…フェデラー)
ドバイは「最も好きなトーナメント」のATP500部門で毎年受賞を続ける大会。
ユーラシアルートでまとめましたが、出場選手的にもここまでの3大会からはガラッと変わったメンバーになっています。
開催都市で連想されるように豊かなオイルマネーによって多くのトップ選手を招待し、昨年はトップ10選手が5人も出場しました。
今年は大会の常連であるフェデラーが優勝。復活ののろしを上げました。
来シーズンは翌週がデ杯1回戦なので、どれだけトップ選手を招待できるかが少し不安視されます。
北米ルート
week6
メンフィスオープン(メンフィス、インドアハード、ATP250、昨年優勝…錦織)
錦織にとってはお世話になっている大会です。音楽の街で行われる大会は優勝トロフィーもギターの形を模したものになっています。
以前はATP500だったのですが、集客力がATP500からは程遠くなるほど悪く、2014年から降格。錦織は2013-2014と2連覇しましたが、このあおりを受けて連覇したのにランキングポイントが下がるという珍事が発生しました。来年の出場も発表されています。
week7
デルレイビーチオープン(デルレイビーチ、ハード、ATP250、昨年優勝…チリッチ)
2008年に錦織圭が初優勝を決めた大会。昨シーズンも出場予定でしたが、メンフィスでの疲労の影響で2回戦敗退(棄権)。
2015年のearly commitmentには錦織の名前がありませんでした。今年はもう出ないのでしょうか。
week8
アビエルト・メキシコ・テルセル(アカプルコ、ハード、ATP500、昨年優勝…ディミトロフ)
今年クレーからハードにサーフェスが変わり、出場者もクレーコーターから様変わりしました。
マレーとディミトロフの準決勝は今期の非グランドスラムベストマッチの5位に選ばれています。
その大熱戦に勝ったディミトロフが初のビッグタイトルを獲得しました。
個人的にはリオ、ハンブルグ、ワシントンと並んで穴場の500大会だと思っています。500にしては層が薄いです(同時期に南米にクレーコーターが集結し、分散しているのが理由?)。
南米ルート
week5
エクアドルオープン(キト、クレー、ATP250、新設)
新設の大会。昨年まで行われていたヴィナデルマール(チリ)に代わる大会です。
現在リオ五輪に向けて南米でのテニス拡大を計画しているATP。昨年リオを新設したのに続き新しい国でのツアー開催にこぎつけました。
week6
ブラジルオープン(サンパウロ、インドアクレー、ATP250、昨年優勝…デルボニス)
今年はweek8でマスターズ前週だったため、トップ選手の一部が撤退したため、層が薄い大会になりました。今年はど真ん中なので激戦が予想されます。
ツアーで唯一のインドアクレーの大会です。
今年はデルボニスがツアー初優勝を果たしました。
week7
リオ・オープン(リオデジャネイロ、クレー、ATP500、昨年優勝…ナダル)
クレーのATP500が昨年新設されました。リオ五輪に向けての南米振興策の一つです。
今年はクレーキング、ナダル出場で南米のテニスファンが盛り上がりました。期待に応え優勝です。アンドゥハルの猛攻をしのいだ準決勝はベストマッチ3位です。
week8(2/23~3/1)
ブエノスアイレスオープン(ブエノスアイレス、クレー、ATP250、昨年優勝…フェレール)
クレーコーターがそろう大会。来年は翌週にデ杯を控え選手招待が心配です。
今年はフェレールが優勝しています。
長かった。実に4週間で12大会が行われるこの武者修行シリーズ、実は7月にもあります。
トップ選手の出場はドバイ、ロッテルダムにほとんど集中するので、観戦としては比較的落ち着いた時期です。ただしフェレールは除く。フェレールは除きます(大事なことなので2回言いました)。
あとチリッチも得意のインドアハードで伸ばしてくる時期ですね。来シーズンはまずこの時期をどう成績で抜けられるかが調子のバロメーターでしょう。
観戦スタイルとしてはむしろお気に入りの選手を探すのにピッタリな時期だと思います。
3月マスターズはドローも大きいですし、それまでにいろんな選手にあたっておくといいですね。
「春の北米マスターズ」
3月はそれぞれ2週間にわたって行われるマスターズ2大会です。
96ドローで行われ、シードもマスターズ唯一の32。正直3セットマッチで後半連戦進行のグランドスラムみたいな感じです。
1週間で少ないドローで行われるマスターズと違い、じっくり絞られていくので比較的波乱は少ないイメージがあります。
week9(3/2~8)
デ杯1回戦(その3で解説予定)
week10、11(3/9~22)
BNPパリバ・オープン(インディアンウェルズ、ハード、マスターズ1000、昨年優勝…ジョコビッチ)
インディアンウェルズってどこ?と聞かれることがよくありますが、サンディエゴ近郊の内陸にある都市です。
PVなどを見ても砂漠の町といった感じで、乾燥した気候です。
コートはハードコートであることを考えると低速寄りと言われています。
今年はナダルがドルコポロフに序盤で敗れ、大波乱の幕開けとなりました。
結局ジョコビッチとフェデラーの決勝になり、ジョコビッチが優勝しました。
week12、13(3/23~4/5)
マイアミ・オープン(マイアミ、ハード、マスターズ1000、昨年優勝…ジョコビッチ)
昨年錦織圭が4強入り。あのフェデラーを倒したことで一躍ニュースになった大会。
それまでの2年間も16強(シードキープ)しており、相性のいい大会。
もともと錦織が得意としていた高速ハードコートでの大会。インディアンウェルズと比較するとラリーテンポが違うので、選手はこの調整に苦しみます。
ここで錦織がマスターズ初優勝というのはこれも結構な確率であると思っています。
※ソニー・エリクソンオープンだと私も思ってたのですが、どうやら正式名称はマイアミオープンのようです。冠スポンサーを降りたんでしょうか。
この2週のマスターズは水~木曜日開幕なので、優勝しても3日ほど休みがあります。
マスターズ2週連続優勝は本来すごく難しいのですが、今年はジョコビッチが連勝しました(しかしサーフェスは結構変わってるので、やっぱりすごいとしか言えないのですが)。
こんな感じで3月まで紹介しました。いやー長かった。
次回は4月からのクレーシーズンと、6月からの芝シーズンの紹介です。