ダブルスの決勝は第1シードのブライアン兄弟が流石のプレーで4度目の最終戦優勝を果たしました。さあいよいよシングルス決勝…ところがフェデラーが私服でコートに入ってきたのです。 "It would be too risky at my age to do this right now. I hope you understand." Roger Federer on his withdrawal. pic.twitter.com/nlkeIdSTTz— ESPNTennis (@ESPNTennis) 2014, 11月 16  あまりにも突然の幕切れ。フェデラーはバブリンカとの死闘の末に背中を痛めてしまい決勝を戦わずして棄権することになったのです。 .@DjokerNole: "This trophy is the crown for all the achievements I had this year." http://t.co/pVq8hQbQnP #atp pic.twitter.com/rMo1bflCJv— ATP World Tour (@ATPWorldTour) 2014, 11月 16  ジョコビッチは1985~87年のレンドル以来となる最終戦3連覇を成し遂げました。今大会のジョコビッチは完璧でした。決勝を戦わなくても間違いなく一番優勝にふさわしい選手でした。  その後埋め合わせとして行われたのはジョコビッチとマレーのエキシビジョン。マリオカートをやっていたら急遽呼び出されたというマレーですが立派に役目を果たしました。しかもノーギャラとのことで、本当に頭が下がります。マレーはその後マッケンローやヘンマンとのダブルスもこなす大車輪の活躍、ロンドン入りしていた過去の名プレイヤー達とマレーが様々なプレーで会場を盛り上げました。対応に追われたATPもチケットの払い戻しに応じるなど懐の深さを見せました。緊急事態を皆でカバーしたのです。 Right. Who are you picking? #Murray / #McEnroe vs. #Cash / #Henman #SkyTennis pic.twitter.com/tQhBoPv0Wt— Sky Sports Tennis (@SkySportsTennis) 2014, 11月 16  フェデラーはこれが自身3度目の棄権。33歳にしてまだ3度目の棄権で、しかも試合中の棄権はまだ一度もないというのは本当に凄いのですが、よりによって3試合目が今日でなくてもよかっただろ…というのが自分としては正直な気持ちです。しかしいつかはこうなる運命だったのかもしれません。なにせフェデラーは33歳にしてATPでもっとも試合数をこなした選手になってしまっているのです。ATPでただ一人80試合以上(83試合!)に出場、いかにフェデラーといえども33歳の大ベテランです、相当の負担が蓄積されていたことは想像に難くありません。むしろよくここまで故障と無縁で来たものです。  実は今回対戦せずに優勝することになったジョコビッチにも今年似たような経験があります。モンテカルロの準決勝でほかならぬフェデラー相手に負傷を押して出場して完敗を喫しました。ジョコビッチは試合後にこう語っています。 “I am a professional athlete. I fight. I compete. I don’t like to withdraw from tournaments. I don’t like to retire my matches. I like to play to the last point.” プロのアスリートである以上、最後のポイントまで戦う。これがジョコビッチの考え方であり、おそらくまた過去の事例からしてナダルも同じ考え方でしょう。一方フェデラーの場合は、満足のいくプレーができないのなら試合するべきではない、その代わり試合に出たら絶対に最後まで戦う。そんな姿勢が見て取れます。  痛々しい姿であってもプレーする姿を見るのがよいか、それぐらいなら休んでもらったほうがよいのか。こればかりは難しい問題です。そもそも怪我しないのが一番なのですがそんなわけにもいかないですしね。 ————————–  しかしこれほどまでに怪我に強かったフェデラーがこんな決断を下さなければならない。ここにフェデラーの「終わり」の予感を感じるのは私だけでしょうか。背中の負傷は昨年のフェデラーが一年通して苦しめられた怪我でもあります。錦織戦やマレー戦のように万全ならまだトップ5クラスでも相手にしないフェデラーですが、来年以降は怪我と向き合いながらのキャリア最終盤になるかもしれません。  そんなフェデラーの最初の試練は来週のデビスカップ決勝で訪れることになります。おそらくフェデラーは強行出場すると見られますが会場は苦手のクレーで、しかも相手はツォンガ,モンフィスらフェデラーが今年苦しめられた選手達です。スイスチーム不仲説まで囁かれる中、この逆境でフェデラーがそしてバブリンカがどんなプレーを見せるのか、今週末テニス界最後のイベントが開幕します。