【準決勝第1試合】錦織圭VSノバク・ジョコビッチ  ジョコビッチが今年敗戦を喫した回数はわずか8回。全米前の絶不調期にツォンガとロブレドにそれぞれ敗れました。全豪では三度目の死闘となったバブリンカの執念の前に敗れ、全仏ではまたしても赤土の王者ナダルが立ちはだかりました。  フェデラーに対して今年は2勝3敗、今年唯一ジョコビッチが負け越している選手です。ウィンブルドン決勝という大一番こそフルセットの死闘の末に制しましたがこないだの上海決勝など3度の敗戦を喫し、もうひとつの勝利、IW決勝も最終セットタイブレークまでもつれた非常に厳しい戦いでした。年間1位争いには勝利しましたが直接対決で負け越したまま終わるわけにはいきません。決勝でリベンジを果たし、誰がナンバーワンなのかはっきりさせてやらなければならないでしょう。  残りひとつの敗戦が皆さんご存知全米準決勝、錦織戦でした。ジョコビッチは一見全米前の不調を脱したかのように勝ち上がりましたがその中に見えていたわずかなほころびを錦織が素晴らしい攻撃の連続で見事に突破し勝利を収めました。ジョコビッチは不調だったとよく言われますがマレーがそうだったように普通の選手では突破できなかったでしょう、錦織だからこそ成し遂げられたのです。  逆にパリ準決勝では前日夜にフェレールとの死闘の末勝利を収めて勝ち上がってきた錦織にジョコビッチが襲いかかりました。錦織の元気ないサーブは容赦なく厳しい返球を食らい、ストローク戦でも非常に安定感の高いラリーと時折見せる角度をつけたショットが錦織を追い詰めました。錦織は一度ブレイクこそ奪って意地を見せたものの試合としては完敗でした。  今日の決戦はわずか2ヶ月の間に3度目の激突です。対戦が多い、そしてそれが全て準決勝ということは何よりお互いがきっちりそこまで勝ち上がっているということを示しています。錦織はこうやってジョコビッチと毎大会のように矛を交える存在に成長したのです、まずはそこを褒めたい、素晴らしいことです。  しかしそこまで勝ち上がるだけで満足してはいけないのはもちろんです。だがジョコビッチの壁はこれまで以上に高くなっています。インドア30連勝中、全米準決勝の敗戦以降16勝1敗、そのうち9勝がトップ10から、そしてその間許したセットがわずか3。どうすればこの壁を越えることができるのか?  錦織の状態さえよければ素晴らしくハイレベルな試合になりそうなので、私が書けることはあまりない気もしますが、唯一フェデラーだけがジョコビッチを破れる状況なら、フェデラーに学んでジョコビッチに臨むのが一番勝ち目があるのではないでしょうか。すなわちジョコビッチの安定感を打ち破る攻撃力を見せつけつつもそれによるミスを最低限に抑えることです。現在のジョコビッチはやや守備型に振れがちなのが難点で、角度をつけたり深いショットを打ち込むことで攻守を両立している状態です。自分からパワフルなウィナーを取りに来ることはあまりありません。その高い守備力を攻撃力で打ち破りさえすればジョコビッチに反撃の手はないでしょう。もちろんそれは限りなく難しいミッションなのですが…  つまらないミスを減らすこと、ファーストサーブをしっかり入れることと言った当たり前の事項に加えて錦織に必要だと個人的に思うのは、「攻め急ぎ」をどれだけ我慢できるか。上海のフェデラーも我慢するときはしっかり我慢してジョコビッチがペースを落としたところで一気に攻撃に転じるシーンが多く見られました。素早い攻守の切り替えでジョコビッチの壁を切り裂いていけば必ずチャンスは訪れるはずです。  そして第1セットを落としてしまっても気落ちしないこと。第2セットのジョコビッチには必ず落ちる時間帯があるように見えます。パリの錦織戦でも第2セット簡単にブレイクを奪ってから錦織にブレイクバックを許しているのです。最終戦でもチリッチ戦でやらかしています。その隙にどれだけ付け込めるか、気を取り直したジョコビッチが再びブレイクを奪いにくる瞬間をしのいだ選手はまだいませんが、錦織ならできると信じています。  どれだけの死闘になっても、必ず勝利を収めてほしい!頑張れ!