錦織とフェデラーの一戦は期待通りの激しい勝負で幕を開けました。お互い開幕ゲームをキープして迎えた第3ゲームにまず錦織が攻勢をかけて最初のブレイクポイントを握ります。しかしこのピンチにフェデラーのファーストサーブが火を噴くと3度のデュースの末フェデラーがキープに成功しました。  フェデラーのファーストサーブは脅威です。ファーストサーブが入っているうちは自分も負けじとキープを続け確率が落ちたところを叩くのが対フェデラーの定石。しかし錦織は今日もサーブが戻っていませんでした。DFを犯した錦織の隙を見逃さず一気に攻め立てたフェデラーは走りながらのパッシングショットで錦織の横を抜き去りブレイクポイントを握ると回り込んでの逆クロスを叩きこんであっさりブレイクを奪ってしまいました。  だがブレイクには定評のある錦織のことですからまだまだこれから…と思われたのですが中々調子が上がりません。錦織有利なはずのロングラリーに持ち込んでも錦織側にもミスが出るせいで効果が上がらず、対するフェデラーはファーストサーブとフォアハンドを軸にどんどん速い攻めを繰り出して錦織からポイントを奪っていきます。  それでもその後苦しみながらキープを続けた錦織、最終ゲームでフェデラーはファーストサーブが入らなくなってピンチを迎えました。錦織得意のリターン叩きが出れば土壇場でのブレイクが見えてくるはずだった30-30。ここからフェデラーはラオニッチ戦でも見せた積極的なセカンドを披露します。まずはボディに深いスピンサーブ、錦織は叩くどころか返すことすらできずフェデラーのセットポイント。お次は錦織のファーストかと思うようなセンターにぴったり収まるスライスサーブ、錦織はなんとか返しましたが待ち構えたフェデラーの逆クロスが炸裂、錦織は第1セットを失ってしまいます。  MTOを取って手首にテーピングを巻き返した錦織。試合後手首の状態について聞かれて「いつものように全身を使ってショットを打てるわけではない。怪我まではいっていないと思いますけど……」と話した錦織でした。錦織のプレーぶりを見れば明らかに影響していたと言えるでしょう。しかしそれでもマレーは倒しているわけで、やはりフェデラーの強さをほめたたえるしかない試合だったと思います。  第2セット、錦織はまたしてもDFをきっかけにブレイクを許してしまいます。相変わらずプレーが低調な錦織に対してフェデラーは第2セットエンジン全開になってきました。ファーストサーブがどんどん炸裂し、錦織のストロークに対してもライジングで軽く拾い上げてあっさり返します。そしてチャンスボールと見るや否や回り込んでのフォアハンドの強打が炸裂。もうこうなってしまっては錦織はなすすべなくポイントを失うばかりでした。第7ゲームでも錦織は5個目のDFでブレイクを許してしまいフェデラー5-2。  なんとか意地を見せたい錦織はフェデラーを追い詰めて30-40のチャンスを作りました。今日3個目のブレイクポイントでした。だが素晴らしかった今日のフェデラーを象徴するかのようにファーストサーブが突き刺さりデュースに持ち込まれると、強烈なファーストサーブからバックハンドのショートクロスでウィナーを取られてフェデラーのマッチポイント。最後もファーストサーブが突き刺さってフェデラーが6-3,6-2で錦織を下しました。第2セットのフェデラーのファーストサーブ確率は65%、ほぼ完璧でした。 ————————–  錦織の敗因はなんだったでしょうか(あえて手首の故障の話は抜きで考えましょう、マレー戦でも試合前の練習でも軽快な姿を見せていたのですから)。 私も直前プレビューではフェデラーに攻め勝て!みたいなことを書いてしまいましたが実際は第1日のレビューで書いたほうの考えが正しかったようです。錦織もフェデラーも同じように攻撃の選手。つまり錦織とフェデラーがどちらも本来のテニスをすればリズムがぴったり合ってしまうのです、それが第3ゲームまでの激戦でした。しかしその状態からフェデラーがリズムをつかんでさらに攻勢を強め、逆に錦織が落ちてしまったらどうなるでしょう?答えは決まっています。  錦織が取るべきだったのは、ラリーのペースをもっとスローにしてフェデラーのペースを乱し、なおかつバックハンドを辛抱強く攻めることだったでしょう。錦織が自分からミスしてしまうせいでロングラリー自体は互角でしたが、その中でもバック攻めは一定の効果を発揮していたのです。錦織はそれに気づくべきでした、フェデラーを自分の土俵から追い出して泥試合に持ち込んでいれば試合はわからなかったと思います。  一方勢いに乗ったフェデラーのプレーはとにかく素晴らしかった。錦織の実力を十二分に認めたうえで自分の強みを最大限に生かしたプレーを披露してきました。卓球の3球攻撃かと錯覚するような早い攻め、錦織の強打をいなす軽やかなライジング、鮮やかなフォアハンドの強打、試合通して好調だったファーストサーブ、そして勇気あるセカンドサーブ。フェデラーはセカンドサーブでなんと56%ものポイント獲得率を記録しています。特にスピンサーブが威力を発揮し、錦織は試合通してまともにセカンドサーブを叩かせてもらえませんでした。 ————————–  第2試合ではマレーがラオニッチのサーブを破ってストレート勝ちを収めました。ラオニッチは1st確率が53%にとどまり大苦戦。第1セットをあっさり失うと第2セットも先にブレイクを許してしまいます。  しかしラオニッチも直後のマレーのサービスゲームを破ってブレイクを奪い返し、そのまま試合はタイブレークへ一直線かと思われましたが… Video: sensational! How good is this from Andy #Murray?! Fantastic hands. #FinalShowdown #tennis http://t.co/mhVsgUdXtr— TennisTV (@TennisTV) 2014, 11月11  このゲームでブレイクを奪ったマレーが最後きっちりキープして試合終了です。  現在グループBはフェデラーが1位、1勝1敗の二人は直接対決の差で錦織が2位、マレーが3位、2連敗のラオニッチが4位となっています。