やはり最終戦は独特な雰囲気を持っています。そんな中でシングルスの開幕マッチを務めた錦織とマレー。満員の観客と大声援に迎えられた錦織はやや硬さが見られながらも第1ゲームをキープ発進します。錦織は続く第3ゲームでもサービスキープに苦しみブレイクポイントも与える大ピンチでしたが対するマレーのほうも調子が上がってきません。試合は盛り上がりを見せないまま2-2で第5ゲームに入りました。  第5ゲームで錦織はストロークのミスを連発して0-40の大ピンチを迎えてしまい、なんとか2本返したものの最後をダブルフォルトで落としてしまいました…だが今日の錦織はツイてました。直後のゲームでマレーもダブルフォルト2本で自滅して錦織が3-3に追いつけたのです。  だが乗っていけない錦織はまたしても第7ゲームで30-40のピンチ…ここはマレーの浅いリターンしっかりバックハンドで叩いてデュースに持ち込んだ錦織、そして2度目のデュースでようやく錦織「らしさ」を発揮しました。まず錦織が攻勢に出ましたがマレーにこれを全てしのがれます、だが錦織もここで焦ることなく冷静にロングラリーを展開し最後は回りこんでフォアのDTL!次のポイントでも逆クロスのショートクロスを打ち込んで連続ウィナーを奪った錦織に勢いが出て行きました。錦織は第9ゲームでも見事なフォアハンドのランニングショットを決めてキープ、錦織5-4で試合は第10ゲームに入ります。  マレーの第10ゲーム、錦織がドロップショットを決めてポイント先行すると、15-15からのロングラリーはしっかり前で前でボールを捉えて攻めきり、続くマレーのセカンドサーブをリターンエースで15-40!ストローク戦で劣勢に立ったマレーは1つ返したものの30-40から錦織が打ち込んだリターンをドロップで逃げて自滅。攻めきった錦織が第1セットを先取しました!  錦織が勢いに乗って第2セットに入ります。ラブゲームで第1ゲームをあっさりキープし、直後の第2ゲームでは30-40からマレーが一歩も動けないドロップショットを決めて一発でブレイク成功。一気に3-0まで持って行くと続く第4ゲームでもネットに詰めたマレーを見事に打ち破ってブレイクポイントを握って見せます!第2セット序盤は錦織とマレーがあまりにも対照的にプレーしていました。 Video: What a shot! And how good were those volleys? #Nishikori & #Murray playing computer game #tennis http://t.co/Eh2rxqp2ht— TennisTV (@TennisTV) 2014, 11月 9  だがこのままで終われないマレーは9分以上に及んだ第4ゲームをしのいでキープに成功し、こちらも徐々に調子を上げてきました。試合がようやくハイレベルかつ面白くなっていきます。マレーは第7ゲームで錦織をネットにおびき出してからの低い返球で2度ミスを誘いブレイクバック、錦織もそう簡単には勝たせて貰えません。  しかし5-4のマレーサーブ、第1セットと同じ場面で再び錦織が集中してマレーのサーブを破りに行くと一気に勝負は決しました。最初のポイントからいきなりスマッシュ→スマッシュ→ジャンピングボレー!次のポイントではリターンエース!攻めた錦織が一気に15-40と2つのマッチポイントを握ると最後はマレーのストロークがバックアウトして試合終了。錦織がマレー戦初勝利を挙げて最終戦好スタートを切りました。  最初明らかに硬くミスを連発していた錦織が徐々に調子を取り戻して最後はいつも通りのプレーを披露してくれたのとは対照的にマレーのパフォーマンスの低さが表れた試合でもありました。序盤は錦織におつきあいしてリードを奪えずに、そして終盤調子を上げた錦織に押し切られました。第2セットもリードされてようやく目が覚めたかストロークが冴えだして追いついたのですが…やはりマレーはサーブが戻っていないのか。リターンであまり攻撃的に来ないフェレールやディミトロフは総合力で倒すことができましたがリターンを叩いてくる錦織には届きませんでした。  錦織は第2セットのパフォーマンスを維持できればこのままRR突破が見えてくるでしょう。しかしサービスだけは改善しなければなりません。マレーは錦織のセカンドサーブをサービスライン近くまで出て返球していましたがこれが全く効果なく、むしろ残念なリターンになるシーンがよく見られました。錦織がそうしたようにマレーも錦織のサーブの弱さを咎めることができていればもう少し試合展開は変わったかもしれません。 ——————————  勝者が錦織と対戦することになった第2試合はフェデラーとラオニッチが激突しました。錦織同様に立ち上がりのサービスゲームがやや硬いラオニッチに対し、フェデラーはラオニッチのボディにパッシングの集中砲火を浴びせてあっという間に0-40とするとそのままブレイクを奪ってしまいました。フェデラーはマレーと違って容赦ありません、ストロークが安定しないラオニッチのミスに乗じて第6ゲームでもブレイクを奪いあっさり第1セットを先取しました。  だが第2セットはラオニッチも調子を戻しむしろフェデラーを押し込み始めました。リターンの強打や逆クロスに回り込んでのバック攻めでフェデラーを追い詰めます。だがどうしてもあと1ポイントが奪えません。3度のBPがありましたが、1度目はフェデラーがファーストサーブから攻めきり、2度目はラオニッチがフォアハンドを宇宙へかっ飛ばし、3度目はフェデラーが厳しいセカンドサーブでラオニッチに返球させません。ラオニッチは6-5の第12ゲームにフェデラーのネットプレーを破って4度目のBPとなるセットポイントを握りましたがフェデラーはこの勝負所でファーストサーブを炸裂させてデュースに持ち込むと深さギリギリのセカンドサーブを2本続けてタイブレークに持ち込みました。  迎えたタイブレークはそれまでの熱戦が嘘のような一方的展開となりました。いきなり最初のポイントでラオニッチのファーストサーブを破るなど集中力を上げて臨んできたフェデラーを前にラオニッチはDFや凡ミスを連発、なすすべなくポイントを失いタイブレークは7-0でフェデラーが制し勝利を収めました。7度目の優勝へ向けてまずは好発進といったところでしょうか。  試合後には「ステファン・エドバーグ・スポーツマンシップ賞」の授賞式が行われコーチのエドバーグとともに笑顔のフェデラーでした。 Sportsmen, the both of 'em (Getty) pic.twitter.com/xul9IQoaMx— TennisNow (@Tennis_Now) 2014, 11月 9  錦織は日本時間の火曜日23時よりフェデラーと対戦します。フェデラーは自分から非常に速い攻めを繰り出して錦織の攻撃を封じようとするでしょう。錦織がこれに対してどう戦うのかが一つの見どころです。お互いに攻撃的ショットの応酬とするか、それともフェデラーのバックハンドをじっくり攻めて自滅を誘うか。攻守のバランスが求められる戦いとなるでしょう。マイアミで勝利した時のようにフェデラーが自らのサービスゲームでプレッシャーを感じるぐらいにまで錦織がストロークで追い込むことができれば、勝利は目の前です。