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20141102_tennisuniversity_k1 写真提供:Schüttler Waske Tennis-University

今、世界中のプロ選手が集まる、ドイツのテニスアカデミー「シュットラー・ワスケ・テニスユニバーシティ」をご存知でしょうか。 テニスファンの中には、名前でピンときた方もいるかもしれませんが、実はこのアカデミー、ドイツが誇る2人のトップ選手が設立者なのです。 一人は、世界ランク5位にまで登り詰めた、ドイツのNo.1選手、ライナー・シュットラー。そしてもう一人は、全仏オープンのダブルスでベスト4にも進出した、アレクサンダー・ワスケ。 今回、HOT SHOTでは、設立者の一人であるワスケに話を聞くことが出来ました。 世界的に注目されながら、日本ではほぼ情報が出ていないこのアカデミーの全貌、そして世界で通用する選手になるための条件を、ワスケの口から直接語ってもらいました。

選手には全てが備わった施設が必要

Q:最初に、ワスケさんとシュトラーさんが、アカデミーを始めたきっかけを教えてください。 A:私たちが選手時代、テニス選手において必要な全てのトレーニングが、一つの場所で完結する場所がなく、それが必要だと感じたからです。 例えば、私達がツアーを回っていた時は、フィットネスジムに何時に行き、場所が違うテニスコートに何時に行き、トレーナーとは何時に会い...と、時間的に拘束され、とても不便でした。 さらに多くの選手は、フィットネスコーチ、テニスコーチを専属で雇うことが金銭的な面でも大変であり、選手同士でシェアをする必要もあったのです。 そこで私たちは、一つの場所に必要な施設が全てあり、且つこのようなトレーナー及びコーチがいて、選手がシェア出来る環境があればいいのではないかと考えました。ハードコート、クレーコート、インドアコート、サウナ、ジム、フィジオセラピー、アイスバス、寝る場所、空港に近いところ...。 これらを全て備えたのが私達のアカデミーで、ドイツのフランクフルト空港からも、15分の位置に設立しました。

20141102_waske_k2 ▲現役時代は、ドイツを代表する選手として活躍したワスケ

少人数制で、個人に特化した練習を行う

私たちは、アカデミー設立当初、一人の選手とコーチから始めました。ペトコビッチ(※1)が、先ほど述べた好環境の話を聞いてきたのです。私たちと練習を始めて、彼女は世界ランクを45位から9位まで上げました。 続いてやって来たスティーブ(※2)が470位から70位、ケルバー(※3)が107位から5位まで、ランクを上げました。 そうすると、多くの人が質問をし始めたのです。あなた達のアカデミーでは何をしているのか?魔法の薬でもあるのか?って。(笑) 成功の重要な点として言えるのは、沢山のコーチと常時、共にトレーニング出来る環境があることです。 多くのアカデミーでは、4時から6時など短い時間を決めて、フィットネスコーチが来てくれますが、全ての練習を見ていないため、選手の本当のコンデイションが分かりません。 私たちのアカデミーでは、2人のフルタイムのフィットネスコーチがいます。朝から夜まで選手のテニスを見て、コーチに相談することが彼らの仕事です。 例えばネットへのダッシュが遅いなど、選手がコーチから受けた指摘をフィットネスメニューに取り入れ、改善出来る点を徹底的に改善します。 また、他のアカデミーと比べて、個人に特化した練習ができます。 例えば他のアカデミーでは、一つのコートに4人の選手がいます。多くの場合、一人のコーチが2つのコートを見ます。 私たちのアカデミーでは、1つのコートに最大2人の選手しか入れません。そして1つのコートに対して、1人のコーチがいます。そのため、非常に効率的に、個人に特化した練習が出来ます。 そのようにして成功しています。この手法は、多くのメデイアにも取り上げられてます。

20141102_petkovic_k2 写真提供:Schüttler Waske Tennis-University ▲世界ランクトップ10入りを果たしたペトコビッチ

アカデミーの施設環境について

Q:コートはどのくらいありますか? A:4つのハードコートと、5つのクレーコートがあります。更にもう2つ、ハードコートを作っています。 Q:コーチはどれくらいいますか? A:コーチは12人ですね。 Q:選手はどれくらいいますか? A:現在、35人から40人程度のプロ選手が属しています。 また、休みの期間には、8歳から18歳のジュニアのためのキャンプを開催しています。 プロになるためのプロフェッショナルプログラムは、14歳から募集していて、だいたい16歳から21歳が占めています。 才能ではなく、どれだけやりたいか、どれだけ練習したいのか。それが大事です。 テニスが大好きで、上手くなりたい人なら大歓迎です。才能があってもやる気の無い人は、来る必要はありません。 Q:日本人も参加していますか? A:ええ。日本人もよく来ますよ。日本人とトレーニングするのはとても楽しかったです。日本人とドイツ人は、相性が合うのです。

20141102_waske_k3 写真提供:Schüttler Waske Tennis-University ▲恵まれた環境のもと、多くのプロ選手が練習を積む

日本のインハイ王者、後藤翔太郎も留学

Q:2012年のインターハイ覇者である、後藤翔太郎選手が留学していましたね。ワスケさんの目にはどう映りましたか? A:彼はとても才能があり、ポテンシャルが高く、非常に良い選手になれる素質を持っていると思います。しかし英語ができなかったので、英語の先生をつれてきました。言語は重要になります。 また、彼には才能がありますが、もっとテニスへの情熱が必要です。 彼は、真面目に練習をこなしていましたが、自分に対して甘くなる時がありました。彼に必要なのは、戦う姿勢です。私からすると、まだまだ人生のためにテニスをしているというのではなく、ただテニスをしているという印象でした。 そこを改善できさえすれば、彼は上を目指せる選手だと思います。 私たちのアカデミーでは、勝つことにこだわっているので、強い情熱が欲しいのです。

20141102_goto_k2 写真提供:Schüttler Waske Tennis-University ▲インハイで3冠を達成した後藤の才能は、ワスケも高く評価していた

ジュニアは常に自分より強い選手と練習すべき

Q:日本人のジュニアがプロを目指す上で、大切な事は何でしょうか? A:自分より上手い選手と練習すること。挑戦しない練習は、意味がありません。15歳、16歳のうちに、世界の強い選手と戦う必要があると思います。 ルイス・ベッセルという、ドイツのジュニアナンバー1の選手がいますが、彼はインドの世界ランク290位の選手と練習させています。 試合をしてみると、インドの選手が6-2,6-2で圧勝するんです。ジュニアではナンバー1でよくやっていますが、世界に出ると自分はまだまだだと、このことを理解するのが大切なのです。 ジュニアの中だと、自分が上手いと勘違いをする、これが駄目なのです。もっと競争をし、上を目指すことを大事にしていかなければなりません。 錦織圭が成功したのは、若いうちから世界の選手と戦ったからだと思っています。世界で戦える選手になるためには、若いうちから世界で戦うしかない、そう考えています。

20141102_nishikori_k7 photo:Love @ll ▲錦織は13歳からアメリカに留学し、世界のトップ選手と練習を積んだ

若いうちに土台を築くことが大切

Q:例えばクレーコートで育つスペインの選手たちは、粘り強いストローカーになったりと、育つ環境によってテニスに特徴が出来たりもしますよね。ドイツで腕を磨くことで、何か特徴が生まれたりするのでしょうか? A:シュトラーや、私のプレーを見てもらえれば分かりますね。私はパワフルなサーブ&ボレーヤー、対してシュトラーはストローカーです。ドイツでは人によってそれぞれです。 スタイルを考える前に、まずは全員が若いうちに、技術とコーディネーションの向上に取り組まなければなりません。土台を築き上げなければならないのです。土台とは、体力と基礎的な技術です。 まず土台を築き上げること。その次に、強み弱みを見て、それぞれのスタイルを作っていくことが大切です。 あとは、今のテニスはとても速くてハードなので、準備も大事ですね。怪我の予防法や、クールダウンの仕方なども覚えなければなりません。きちんとした生活スタイルを作る事も、人間として必要なことです。

ワスケが見る今のテニスのトレンド

Q:今のテニス界においてのトレンドについて教えてください。 A:今のトッププロに、単なるビッグサーバーは少なくなってきました。非常に集中して、アンフォースドエラーが少ないのが特徴でしょう。いつもエースを狙う訳ではない、とても堅実なスタイルです。 また、ボレーに出る時は、ボレーで勝負するのではなく、その直前のアプローチショットで、もう勝負が決まっている場合が多いですね。ボレーは当てるだけ。 あと最近は、スライスで攻めて攻めて、というスタイルもあまり見られませんね。

20141102_djokovic_k6 photo:Jérôme Chainay ▲現在のテニス界は、ジョコビッチやナダルなど、堅実なストローカーが多く活躍する

17歳のズベレフに注目

Q:これから注目の選手を教えてください。 A:良い質問ですね。私たちの生徒以外では、17歳のアレクサンダー・ズベレフ(※4)です。すでにツアーレベルの大会で、ベスト4にも進出して注目を集めましたが、彼は世界のトップ選手になるでしょう。 私たちのアカデミーにも、12歳のジョナス・フォーライテックという素晴らしい選手がいます。15歳や16歳にも、才能ある選手が多くいますよ。

20141102_zverev_k1 photo:Carine06 ▲ツアーでも頭角を表し始めたズベレフ

-インタビューは以上-

日本からも情熱ある留学生を募集中

今回、インタビューを行ったワスケがコーチを勤める、シュットラー・ワスケ・テニスユニバーシティは、日本からの留学生も募集中とのことです。 トップ選手が多く在籍し、少人数性で密度の濃い練習が行える、このアカデミー。 ジュニア、シニア問わず、世界の最先端のテニスを体感し、強くなりたいという情熱を持つ方は、大歓迎だそうですよ。 興味がある方は、下記のホームページからお問い合わせください。(英語ですが、ワスケ曰くテニス選手には英語力も重要とのことで...!) Schüttler Waske Tennis-University ※1:ドイツの女子テニス選手、アンドレア・ペトコビッチ。自己最高世界ランク9位。 ※2:ドイツの男子テニス選手、セドリック=マルセル・スティーブ。自己最高世界ランク71位、ドイツ期待の24歳。 ※3:ドイツの女子テニス選手、アンゲリク・ケルバー。自己最高世界ランク5位の、ドイツを代表するトップ選手。 ※4:ドイツの男子テニス選手、アレクサンダー・ズベレフ。自己最高世界ランク135位、17歳にしてツアー大会でベスト4に進出した、世界が注目する若手選手。 [sns]