錦織が来週のATP500・バレンシア大会を欠場することが明らかになりました。疲労や臀部負傷を抱えながら戦ってきた錦織はここで今週含めて2週間の休養を取ることで残り2戦に万全の備えで臨むという戦略を取るようです。  楽天や上海の錦織を見ていると更なる休養は当然の選択肢でしょう。しかしいくら最終戦争いで先頭に立っているとはいえこの選択は一見凄くリスキーに見えます。ライバルが今週来週と身を削りながら戦っている中で2週間休んでしまうのです。その間に追いぬかれてしまってもおかしくはありません。  果たして現状はどうなのか、この表を見てみましょう。点線は最終戦出場ラインです。  ラオニッチの痛すぎるモスクワ大会初戦敗退により、パリマスターズ開幕時点で錦織を抜かす可能性は絶対になくなりました。そしてディミトロフには元々2週間で錦織を抜かす可能性はありません。  残りの3人に抜かれたら…という可能性も実はありません。一番ポイント差のないベルディヒを含めて3人共「二週連続優勝したときのみ」錦織を抜かすことができます。これはベルディヒの入れ替えポイントがこの記事で振り返ったように既に埋まってしまっているのが原因です。そしてさらに重要なことに、ベルディヒ、フェレール、マレーは3人共バレンシア参戦です、潰し合いです。つまり結論を言うとパリマスターズ前までにレースランキングで錦織を抜かす可能性があるのは一人しかいないということになります。  さらに錦織、いや最終戦出場勢全員にとって追い風となっているのはナダルの現状です。来週バーゼルに出場した後に正式決定するとはいえ、ナダルの最終戦欠場の可能性はかなり高いと言われています。ナダルが欠場するとその分出場枠がひとつ増え、6人中4人が最終戦に出場することができるのです。点線と矢印でそれを示しています。これで錦織の最終戦争いはかなり楽になるものとみられます。  この週まではリードを保てるとなると問題は一発逆転のあるパリマスターズです。一番下位のディミトロフですら錦織を捉えることができる最後の大盤振る舞い。来年以降さらに上の順位を狙うという意味でもここでは絶対に勝ち上がっておく必要があります。幸い、パリまでに通常のランキングのほうで錦織を捉える可能性があるのはベルディヒとマレーのみと見られ、錦織は上位8シードを維持できます。ここは大きなアドバンテージとなるでしょう。  さらに連戦連戦でパリまでノンストップで乗り込んでくるライバル達はパリ参戦時に既に疲れきっていることが予想されます。フェレール、マレーはパリまで6週連続参戦、ベルディヒ、ラオニッチ、ディミトロフも5週連続参戦です。昨年のフェレールのような6週連続参戦してさらに最後のパリで決勝まで進むという驚異的な戦績もないわけではありませんが…  錦織が体力十分で臨むパリマスターズで大暴れして、そのままツアーファイナルに乗り込む、そんな展開が目に浮かんでくるようです。今年からパリマスターズと最終戦の間に1週間空きが設けられています、最終戦に向けての体力を心配する必要はありません、遠慮無くパリで暴れてきてほしいものです。