デビスカップ準決勝の第1日はフランスとスイスで行われ、初日からホーム国が怒涛の攻勢で2連勝を手にしました。  ローランギャロスでチェコを迎え撃ったフランス。二番手の起用が注目されていましたが、モンフィスではなくガスケを起用してベルディヒにぶつけました。全米8強のモンフィスの疲労が考慮された形ですが、対戦成績5勝3敗とベルディヒに相性のよいガスケの投入はむしろ当然の策だったかもしれません。ガスケは期待通りのプレーを見せて精細を欠くベルディヒをストレートで撃破。フランスが大きな大きな1勝を挙げると第2戦はエースのツォンガが登場、ステパネクの代わりに出場したロソルをこちらもストレートで退けてフランスが2連勝。決勝進出に大きく近づきました(試合結果)。  一方のスイス。全仏のメインコートを用いたフランスよりさらに多い18000人もの観客が集まり、悲願達成へ向けて大きな声援を送ります。その中で登場したのはフェデラー。ボレリの素晴らしいプレーに苦しむ場面もありましたが終わってみれば貫禄のストレート勝ち。これで楽になったか、続くバブリンカもフォニーニをストレートで下してスイスが一気に2連勝スタートとなりました(試合結果)。  ところでフェデラーのデビスカップ成績はこれで47勝16敗、うちシングルスでは36勝7敗となりました。しかし弱小国スイスではこの成績でWGを勝ち上がることは困難であり、全盛期から昨年に至るまでフェデラーはしばしばデビスカップを回避したものです、当然批判の声もありました。しかしフェデラーが出場してシングルス2勝しても勝ち上がれないし、それどころかWG残留すら厳しいというのがスイスの現状でした。08年と10年にはヨーロッパ・アフリカゾーンでの戦いを経てWGに復帰しています。フェデラーが自らのツアーに専念する回数が増えたのも仕方ないのかもしれません。  しかし同時に、ナンバーワン選手としてはフェデラーは十分デビスカップに出場している選手でもあります。例えばナダルは2度のデビスカップ優勝を経験していますが、そのシングルス成績は21勝1敗という完璧なもの。出る必要があるときに出てしっかり2勝を上げていく、選手層の厚いスペインではそれが可能でした。ジョコビッチのシングルス成績は26勝7敗。えっと思われた方もいるかもしれませんが本当です。2009年までのジョコビッチはデビスカップに出ても勝ったり負けたりだったのです。しかし2010年のセルビア優勝時にシングルス7戦全勝の大活躍(2013年も7戦全勝でしたがチームは準優勝)をして悲願を達成しています。  3強より前のチャンピオン達はどうでしょうか。アメリカ勢のシングルス成績はロディック33勝12敗(07年優勝)、サンプラス15勝8敗(95年優勝)、アガシ30勝6敗(90年92年優勝)。フェデラーのコーチ、エドバーグは47勝23敗(シングルス35勝15敗、85年優勝)。エドバーグまでの選手でフェデラーを完全に上回っていると言えるのはボリス・ベッカーでしょう。通算54勝、うちシングルス38勝3敗という驚異的な成績を残し、88年89年と西ドイツを連覇に導いています。こうして見ると著名な選手たちはほとんど国別対抗でも一度は栄光を手にしているのです。彼らよりさらに前のマッケンローやレンドルもしっかりデビスカップの優勝を経験しています。  彼らと異なり優勝できないまま33歳まで来てしまったフェデラーですが、今年は一人ではありません。バブリンカがいます。バブリンカもまたフェデラーが欠場した昨年の1回戦で2度の接戦を落とす悔しい敗戦を喫しており、今年に懸ける思いには強いものがあります。スイスにとって今年はおそらく最後のチャンスでしょう。スイスチームが決勝に進出した場合、対戦国がどちらになっても決勝はアウェーになることが既に決定しており、決勝は厳しい戦いになるでしょうが悲願のタイトルに届く瞬間は訪れるのでしょうか。