いよいよ錦織が決勝に臨みます。試合開始は明日の朝6時です。 【錦織圭×マリン・チリッチ】(全米オープン・決勝)  まずはお互いの勝ち上がりを見てみましょう 4R 錦織 3-2 ラオニッチ チリッチ 3-2 シモン QF 錦織 3-2 バブリンカ チリッチ 3-0 ベルディヒ SF 錦織 3-1 ジョコビッチ チリッチ 3-0 フェデラー (それぞれスコア部分のリンクからレビュー記事に飛べます。なお、対戦相手チリッチについてはこちらの記事よりどうぞ)  錦織は4回戦から文句なしの強敵が続きました。そして彼らを全て打ち破ってここまで上がってきました。一方のチリッチは苦手にしていたシモン戦を突破して以降、準々決勝準決勝と連続ストレート勝ち。準決勝は、ジョコビッチに真正面から挑み怒涛の攻撃で打ち破った錦織とフェデラーを終始圧倒したチリッチという、お互いこれ以上ない決勝への弾みのつき方でした。  この二人の強みを考えると、やはりチリッチのサーブと錦織のリターンという二人の武器が激突する瞬間がカギとなってくるでしょう。チリッチのフェデラー戦を見てみると、ファーストサーブはもちろん速度も最大220㎞ほどあり速いのですが、ビッグサーブを面だけ揃えて返すことには定評あるはずのフェデラーに全くサーブを返させないのは見事でした。イバニセビッチの指導の賜物でしょう。彼はただ速度だけのビッグサーバーではなく、コースや球種を自在に操りまたコースを読ませない力も超一流でした。チリッチも間違いなくその影響を受けているでしょうね。チリッチはベルディヒ戦でもファースト確率63%、ポイント獲得率84%を記録しており、サービスゲームに隙がありません。  しかし錦織の打球への予測力もテニス界最強クラスです。とにかく並はずれたセンスで相手のサーブ方向やショット方向が予測できてしまうのです。そのリズムを狂わされると苦戦するのが逆に錦織の弱点でもあるわけですが、一旦リズムが合えば素晴らしいリターンを繰り出せるはずです。サーブに対応するまでは我慢の時間になるかもしれません。その間にブレイクされては錦織の不利は否めません。錦織のほうもファーストサーブをしっかり入れてラリーの主導権を握り、先に先に攻めていく展開にすることが求められます。  なお、チリッチに敗れた2012年全米ではチリッチ得意のセカンドのキックサーブに対して最後まで対応策が取れないまま敗れた錦織ですが、これに関してはその後の対戦(錦織の3連勝)で克服したと考えてよいでしょう。  ストロークもまた両者の主張がぶつかり合う場。チリッチはパワフルに押し込むストローク、一方の錦織は速度とコースで勝負してきます。パワーに打ち負けて錦織のエラーとなる展開が多くなるようだと厳しくなります。バブリンカのパワーに押し負けなかった錦織であればおそらくストロークの打ち合いは有利に立てると思いますが、バブリンカ戦と同等に近い激しいラリーが展開される可能性もあります。一瞬も気を抜けない戦いです。  そしてグランドスラム決勝の舞台というとても独特なステージ、いかに自分のプレーをするかが一つのポイントになってきます。マレー、ソダーリング、ベルディヒなど決勝初挑戦の舞台で本来のプレーができずに苦しんだ選手は沢山います。あのデルポトロでさえフェデラーが自滅するまでは相当に不利な状況に追い込まれていたのです。4回戦準々決勝と立ち上がり苦しんだ錦織、メンタル面にかつて課題を抱えていたチリッチ、両者ともメンタルを試されることになるでしょう。  ちなみに錦織はマイケル・チャン、チリッチはゴラン・イヴァニセビッチという二人のグランドスラム獲得者に師事していることはみなさんご存じだと思いますが、この二人はともに90年代を戦った名選手。合計11度の対戦経験があり、チャンが最後の試合で6勝5敗と勝ち越しましたがほぼ互角と言ってよいでしょう。お互いを知り尽くしたライバルである二人が、どんな策を弟子に授けるかも見物です。  ここまで私たち素人の想像を遥かに超えること次々と成し遂げてくれた錦織ですが、本人も語ってたように2週間前は大会に出られるかもわからなかったのです。それがここまで来てしまった、本当に賛辞の言葉が見つからないぐらいの素晴らしい快挙です。この見事な物語の最終章を、トロフィーを掲げる錦織の写真で終わらせることができるでしょうか?最後まで、見守りたいと思います。