【歴史に名を刻め!】全米オープン決勝プレビュー 錦織×チリッチ
錦織とチリッチプレッシャーがかかるのはどっち?
今日は、この観点を中心に、この歴史的一戦を分析してみようと思います。
①ストローク戦に関して
錦織は、あの王者ジョコビッチにストロークで打ち勝ちました。錦織の強みは、
世界一の両手バックハンド(王者にバックハンド勝負で勝ったのだからもうこう言ってもよいでしょう)、
ニンジャとも称される卓越したフットワーク(海外でも最も評価されている点のひとつです)、
そして以前から定評のあるフォアハンドです。
ここにスーパーライジングショットとも言われる、ボールの上がり際をたたく類まれな才能と勇気、テニスセンスを持っています。
ジョコビッチの守備力とフェデラーの攻撃力を併せ持っている、とも言えるでしょう。
一方のチリッチ。彼は198センチと大柄ながら、非常に丁寧なストロークを打ちます。同じ大柄な選手のラオニッチと比べても、ストローク力は上でしょう。特にバックハンドがラオニッチより格段に丁寧でクロスコートの打ち合いも得意としています。
しかし今大会は、その丁寧さに加えて攻撃力も備わってきました。フェデラー戦では、ストローク戦でフェデラーは強打をたたきこまれ続け、まさかのストレートでフェデラーを敗北に追い込みました。
しかしながら、錦織のスーパーライジングショットのような、球際の返球、相手のボールが深かった時の返球のセンスはそれほど持ち合わせていません。
フェデラーが負けてしまった原因のひとつにフェデラーのボールが浅くなってしまったことがあげられます。
錦織のボールが浅くなってしまった場合、錦織といえでもストローク戦を優位に進めることはできないでしょう。
結論としては、
「錦織のボールが浅くならない限り、ストローク戦は錦織の優勢。ただし浅くなってきた場合にはチリッチ優勢。」
予想される展開としては、基本錦織優勢で進むものの、チリッチ優勢となる場面がきっとどこかしらででてくると思います。如何にそこを耐えることができるか、も勝負の鍵のひとつになると思います。
②サーブとリターンに関して
チリッチの長身からのサーブは確かに脅威です。ジョコビッチよりは明らかに強いでしょう。
しかしながら、世界最高のビックサーバーの1人、ラオニッチよりは確率、スピード、なども劣ります。
そして鍵になってくるのはチリッチの特徴の一つでもある、アドサイドからのセカンドの超スピンサーブです。
過去には、これに非常に苦しんで、セカンドサービスから全然思うように錦織がポイントを取れず、負けてしまったこともあります。
このセカンドサービスを如何に攻略していくかがひとつの鍵になります。
しかし、過去の勝利した対戦では、序盤はこのサービスに苦しみながらも最終的にはこれを攻略して、ストレートにうまくリターンして勝利したことも何度もあります。
2012年度楽天オープン決勝のラオニッチ戦のタイブレークでみせた、あのストレートリターンです。ジョコビッチ戦でも要所でこのリターンエースをみせてくれました。
本当にこのショットは一般テニスプレーヤーの理解を超えたショットです。テニスを少しプレーした経験がある人ならわかると思いますが、バックハンドのあんなに高い打点からストレートに打ち込む、ということはまず普通は不可能です。バックハンドの高い打点は力が入りにくいからです。
もし錦織に何か1つショットを教えてくれる、って言ったらあのショットをどうやって打ってるか教えて欲しいくらいです 笑
このショットを常に打ち込むことは不可能ですが、大事な場面で決勝でも観られるのではないかと思います。
チリッチもこのショットを知っているはずですから、ブレークポイントなど大事な場面でのチリッチのアドサイドからのセカンドには大きなプレッシャーがかかるでしょう。このプレッシャーによりダブルフォルトすることもきっとあると思います。
それに加え、デュースサイドからのワイドサーブには、錦織に読まれた場合のフォアのリターンエースも怖いです。錦織に読みを絞らせない、巧みなサービスが要求されます。
一方の錦織も、セカンドサービスにはプレッシャーがかかるでしょう。チリッチはできるだけセカンドサービスを叩いてくるはずです。叩かれてもなんとかラリー戦に持ち込む。好調のデュースサイドからのワイドスライスサーブをうまく使う、などして乗り越えてほしいです。
まとめると、「いつものように錦織のセカンドサービスにはプレッシャーはかかるだろう。しかしながら他のプレーヤーと異質、という点では錦織のリターン力を警戒しなければならないチリッチのほうにプレッシャーはかかるだろう。」
③ランキングと対戦成績に関して
今大会前のランキング(過去1年の実績が反映されます)は、
錦織11位、チリッチ16位
レースランキング(今年1 月から今大会前までの実績)は、
錦織10位、チリッチ13位
対戦成績は5勝2敗です。
メディアなどは「5勝2敗だから錦織有利」みたいな論調をしがちですが、対戦成績だけで有利不利を論じることほど、ナンセンスなことはないです。
そんなこといったらフェデラーに0勝5敗だったチリッチが勝てるはずないですからね。
対戦成績の正しい分析の仕方は、
フェデラー対ナダルは10勝23敗だね。
確かに、フェデラーはバックハンドの高い打点を苦手にしており、それがサウスポーでえぐいスピンを操るナダルとは相性が悪くて、それが対戦成績にも出てるね、などと使うものです。
そして彼らは対戦成績に関して論じてもいいほど何度も対戦しており、データが豊富です。
とはいえ、2勝0敗や3勝1敗程度で相性を論じるのはナンセンスだとは思いますが、5勝2敗と、チリッチは錦織がツアーでも比較的多く当たっている選手のうちの一人です。
言えることとしては、「錦織が特別苦手としているわけではない」ということぐらいでしょうか。
両者とも、その時期の実力を反映し、強いほうが勝ってきた、という印象です。
そして何より、NYの今宵の舞台はグランドスラム決勝。もはや対戦成績などは関係ないでしょう。
ランキングの上からいえば錦織が少し上なので錦織のほうにプレッシャーはあるかもしれませんが、錦織のメンタルの強さからすれば、そんなものはほぼ影響しないと思われます。
以上①②③を総合して考えると、①②ではチリッチのほうにどちらかというとプレッシャーが、③はほぼ影響しない(もしくはほんの少しだけチリッチのほうが挑戦者の立場で有利)、ということでチリッチのほうに多くのプレッシャーがかかると思われます。
この記事を書いていて、チリッチの立場になって思ったんですが、錦織って相当相手にしたら嫌な存在ですね。なにやってくるかわからないし、ふりまわしても拾われるし、重要なとこでリターンエース決めてくるし、、、、、、
すんごい存在になってしまいました。2008年のデルレイビーチ優勝からずっと錦織を追いかけてきましたが、まさかグランドスラムの決勝にたつなんて思ってもいませんでした。
ここまで来たら、内容はいい、是非勝ってくれ!
という意見を多く耳にします。
しかしながら、僕はあえて言いたいと思います。
最高のプレーをして勝ってくれ
と。
BIG4が決勝に一人もいないのは、2005年の全豪以来です。この約10年間にもわたる長い間、彼らは君臨し続けてきました。そして、決勝で数えきれないほどの名勝負を繰り広げてきました。そして彼らは、男子テニス界のレベルを、かつてないほどハイレベルなものに変えてしまったのです。数々の死闘、ドラマ、人外と思われるようなプレー、世界中のテニスファンはすっかり目が肥えてしました。
世界中のファンが見ているグランドスラム決勝。両選手には最高級のプレーが求められます。
だからこそあえて言いたいのです。そして錦織ならそれができると確信しているからこそいいたいのです。
錦織圭、最高のプレーをして優勝し、日本中、そして世界中を感動させてください。
追記
明朝はスポーツバーもしくは六本木のパブリックビューで筆者は観戦予定です。友人と楽しんできます。みなさんも、是非この世紀の一戦を見逃さないでください。見逃したら絶対後悔しますよ 笑